w-inds.概論―w-inds.の最近の変化を5,000字で


※追記※
w-inds.の緒方龍一さんご本人にツイートしていただきました。
言葉足らずで恥ずかしい箇所もありますが、読んでいただけて大変ありがたいです。

女性アイドルとジャニーズが日本の音楽界を席巻する時代、w-inds.という3人組の男性アイドルグループをご存知でしょうか。

おそらく名前ぐらいなら、1曲ぐらいなら、ちょっとしたゴシップなら、知っている方は多数いるはずです。
ですが、彼らが2014年現在、バリバリに活動していて、出す楽曲のほとんどがヤバいことは知られていないかもしれません。

アイドルソングに名曲が多いことは、もはや周知の事実です。
ですが、非ジャニーズの男性アイドルにおいて、このテーゼは共有されていない気がいつもしていました。
であるなら、その突破口を準備してみようか。
というか、「もっとw-inds.評価されてもいいよなー」という単純な動機のもと、この記事は執筆されました。

これから語るのは、w-inds.の簡単な歴史と、2015年の展望の予想です。
youtubeの音源もたくさん用意していますので、お時間あれば、ぜひともいくつか聴きながらお読みください。
あと、ファンの人からの補完もお待ちしています(笑)。

最近のw-inds.をまず聴いてみよう

まず、この記事を読んでいるあなたが、最近のw-inds.をまだ聴いていないなら、『Another World』、『MOVE LIKE THIS』、『Timeless』のどれでもいいので一度聴いてみることをおすすめします。
各アルバムより、有名曲をピックアップしました。

■New World(『Another World』より)

■Let’s Get It On(『MOVE LIKE THIS』より)

■Make You Mine(『Timeless』より)

他2作とくらべて気色の違う『Timeless』の評価は後述するとして、とりあえず押さえておきたいのは、ここ最近のw-inds.の楽曲が「カッコいい」ことです(笑)。

では、デビュー時から振り返ってみましょう。彼らのデビュー年である2001年です。

「ヒップホップダンスユニット」の「アイドル」としてデビュー

w-inds.は2001年3月に「Forever Memories」でデビューしました。
コード進行がJ-POPっぽくてスカスカな音響ではありますが、ビートを聴くとわかるように、彼らのキャッチコピーは「ヒップホップダンスユニット」でした。

■Forever Memories

デビューから2008年あたりまでをものすごい削ぎ落として説明すれば、w-inds.は「Forever Memories」のような「ちょっと踊れる」楽曲を中心に、「少年らしいかわいさ」を持っているアイドルでした。
(大人のカッコよさはDA PUMPが担当していました。)

「大人」の不可避と世界標準志向

そんな彼らですが、お世辞にもセールスは好調に進んだとはいえませんでした。
2004年10月発売の『四季』以降はセールスも落ち込み、アイドル路線を変更するべきかどうか考えたのではないでしょうか。
(参考:アーティスト別シングル売上補完 @ ウィキ – w-inds.

また、彼らも当然歳をとりますし、声変わりもしました。
昔は「5オクターブの声が出る」と言われたボーカルの橘慶太ですが、デビューから数年した頃にはすでにその特性は失われ(自分も今書きながらその早さに驚いています)、セールスの状況から考えても、どこかで方向転換する必要がありました。
(参考:w-inds.橘慶太の過去を偲ぶ | -K太’s Cafe- ちょっとしたひとときに。

そこで彼らの選んだ戦略は「音楽性を高めていくこと」、つまり「世界標準の楽曲を生み出すこと」であり、実際に最新の流行を取り入れた音楽を世に出していきました。
この戦略のスタートは2008年11月発売の「CAN’T GET BACK」、戦略のひとつの完成を見たのは「New World」でしょう。

■CAN’T GET BACK(『Another World』より)

そして、ここが最近のw-inds.を語るときに重要だと思うので、ぜひ音楽用語を知らない人にも知っていただきたいのですが、前述した「世界標準の楽曲」とは「エレクトロダンスミュージック」のことです。
少しわかりやすくすると、「キツめの電子音を使った4つ打ち」、もっと抽象化すれば「4つ打ち」です。
では、4つ打ちとは何でしょう。

「4つ打ち」の甘い蜜

4つ打ち(よつうち)とは、主にダンス・ミュージックにおいてバスドラムにより等間隔に打ち鳴らされるリズムのことを指す。曲の中でバスドラムを使い、1小節に4分音符が4回続くリズムであることからそう呼ばれる。ディスコとエレクトロニック・ダンス・ミュージックで多用されるビートである。簡単に言えばダンス・ミュージックにおいて「ドン・ドン・ドン・ドン」と延々と低い音が入っていれば、そのことである。

4つ打ちの一番の特徴は、「等間隔に打ち鳴らされる」から踊りやすいところ。そして、踊りやすいから盛り上がりやすいところです。
2010年以降のw-inds.の曲は、ほとんどが4つ打ちです。ライブで定番となっている「Touch The Sky」などはその顕著たる例でしょうか。

■Touch The Sky(『MOVE LIKE THIS』より)

この方向転換によって、w-inds.は(セールス面で大きな変化こそ見えませんでしたが)もう一度人気を取り戻しはじめ、かくいう私もこのあたりからw-inds.にドハマりし始めました。

ただし、「4つ打ち」というのは、簡単に盛り上がれる一方で、廃れが来るのも早いジャンルです。
お手軽に盛り上がれる4つ打ちに頼りすぎるのは、ある意味、甘い蜜でもありました。

脈々と流れる「ヒップホップ」とその発芽

このように、流行の4つ打ちを取り入れたw-indsは再度盛り上がりはじめましたが、私はその裏でw-inds.が持ち続ける「ヒップホップ」の要素に注目していました。
たとえば、『Another World』の「Truth〜最後の真実〜」や「HYBRID DREAM」、『MOVE LIKE THIS』の「黄昏ONE WAY」などです。
(これ、プロデューサー陣も豪華でして、「Truth」はNe-Yoで、「HYBRID〜」はBATHLOGICです。)

■HYBRID DREAM(『Another World』より)

大々的に取り上げられないものの、私はどこかでヒップホップを続けているw-inds.に期待していました。
いつか彼らはヒップホップを中心に据える。そのとき、これまでの試みが一気に昇華されるだろう、と考えていました。

その発芽は、2013年にボーカルの橘慶太が「KEITA」としてソロデビューした『SIDE BY SIDE』にも見られました。
業界で名を上げはじめたばかりのAKLOを起用したり、AAAのメンバーでありラッパーのSKY-HIをfeat.に招いたり。
これらのアプローチには本当に驚きました。
(アルバム自体も名盤です。「Hey Love」だけでも聴いてほしい!)

そして、このような中で、最新アルバムにあたる『Timelsss』は、レーベルの説明通り、「エレクトロ」=「4つ打ち」からの転換点となるアルバムでした。

エレクトロダンスミュージックへの傾倒から2年を経てたどり着いた大人の心地良さの溢れるレトロモダンなアルバムが完成しました。

レーベルのいう「レトロモダン」という言葉は、Justin Timberlakeの「Suit & Tie」に代表されるような最新型のアーバンポップ、つまるところオシャレな歌詞とコード進行が流行りのビートに乗ったブラックミュージックを指しているのでしょう。要するに(現代的な)R&B=ヒップホップです。

■Justin Timberlake – Suit & Tie

すでに紹介した「Make You Mine」をもう一度聴いてみてください。
構造としては4つ打ちではありますが、これまでの「エレクトロ」とは一線を画し、グルーヴのある、横ノリの、クールな曲です。

全てが昇華された「Timeless」ツアー

そして、この方向転換が最も示されたのは、アルバムではなく、同名のライブでした。
というのも、「レトロモダン」というテーマを軸に選ばれたライブ曲には、前述の4つ打ち楽曲は入っておらず、過去のw-inds.の楽曲をアップデートしたものだったからです。
(参考:【超ネタバレ注意!】Timelessセットリスト(7/19横浜) : w-inds.ライブ現場からの中継です

私もこのツアーには参加したのですが、そこで聴いた「move your body」や「Whose is that girl?」は忘れられない時間となりました。
オケ一発でない、バンドと一緒に生み出していくグルーブの上で歌って踊るw-inds.は本当にカッコよくて、w-inds.がw-inds.である瞬間を見た気がします。

私がw-inds.を追い続けようと決めたキッカケは「HYBRID DREAM」でした。その後、今井了介を中心としたプロデュース陣によって、世界標準のクラブ・ミュージックでヒットチャートに舞い戻ってきたわけですが、私は「今の彼らでもう一度ヒップホップに取り組んでほしい」と思っていて、それはたとえば「Don’t Remind Me」であったりするわけですが、こっちの路線が主となったらどれだけヤバいだろうか。というか、これをメインとして楽しめるお客さんで溢れたらどれだけヤバいだろうか、と妄想してきました。そして、これが実現したわけです。

「アイドル」であることも思い出す「FANTASY」

こんな具合に、再度自分たちの原点も踏まえたw-inds.ですが、翌年2015年1月にリリース予定の「FANTASY」は、この方向を更に進めるような楽曲だと感じてます。
(参考:w-inds. 「FANTASY」|無料動画 GYAO!|音楽

少し意地悪く言えば、『Timeless』で提示していたレトロポップというのは、世界的にも流行っています。
そういう意味では、『Timeless』で提示した方向転換は、単純に「世界標準」の意味合いが変わっただけとも考えられ、ある定度の歌唱力さえあればw-inds.じゃなくても誰でもやっていた可能性がありました。
(もちろん、これを歌唱したのは慶太ぐらいですし、その実力は賞賛されるべきでしょう。)

しかし、「FANTASY」はw-inds.にしかできないレトロポップです。
それは、w-inds.がそもそも「アイドル」であったということでして、このタイミングでいよいよ彼らの「アイドル性」=「かわいさ」を持ってきたところに、非常に驚きつつ(多少の戸惑いもあったのですが)、何度か曲を聴いているうちに「もしかしてこの曲はめっちゃヤバいのでは…」と思うようになりました。

おわりに

以上、とりとめなく書いてしまいました。

ザッとまとめると、w-inds.は「ヒップホップ」の「アイドル」であるところからスタートしましたが、途中でこの肩書きを「世界標準(のダンスユニット)」に書き換えようとしました。
しかし、最終的にはもう一度「ヒップホップ」と「アイドル」に戻ってきたわけで、その道のりが『Timeless』のツアーや「FANTASY」に強く反映されていると感じています。

 
w-inds.がこれからどんな曲をやるか、正確には特定できませんが、ぜひともこの方向を続けてみてほしいと思います。
あるいは、今こそ初期作を録り直したりすると、彼らがたどった道のりがどのようなものであったかわかるかもしれません。

どちらにせよ、2015年も非常に楽しみです。

追記(『Blue Blood』発売によせて)

2015年7月、ニューアルバム『Blue Blood』が発売されました。w-inds.の初期衝動のようなものをあらためて感じられる、とても良いアルバムです。

このアルバムについても、いずれレビューを書きたいと思います。楽しみにしていただけると幸いです。