【ラップとRAP】vol.6 ヒップホップの誕生(2)—SugarHill Gang “Rapper’s Deiight”—


前回の記事や目次などはこちらから。

正しい発音は本当に「正しい」のか?

ラップでもう1点ほど難しい点をあげると、発音にあります。これは日本の英語教育が抱えている問題でもありますから、私が書いたところで何の発見も面白みもありませんが、本書でも重要なことですので、書いておきましょう。

たとえば、そもそも私たちは「ヒップホップ」と書いていますが、これがすでに日本語の限界でして、本来「hiphop」は「ヒップハップ」と聞こえますし、もっといえば「ヒッパッ」と聞こえます。つまり、本書の試みは、この曲の1小節目の「hip」と「hop」ですでに挫折を迎えようとしているわけです(笑)。

百歩譲って、上のような困難だけなら何とかなるかもしれません。しかし、この他にも難しいことが2つあります。ひとつは、単語と単語どうしをまとめて発音してしまうリエゾンについて。そして、もうひとつは辞書的/一般的な発音をラッパーがしていないことです。
ちなみに、2つ目については私個人の見方です。英語のおしゃべりには正しい発音があるけれど、ラップにおいては、正しい発音はフロウやライムの名の下に変更があるだろうと、こういうわけです。

というわけで、いくつか困難さを説明したうえで=チャレンジが失敗したときの言い訳をたくさん作ったうえで(笑)、それでは練習にとりかかってみましょう。最初ですから、読者がまごつくぐらいスローに、1音ずつ確認するような気持ちで進めてみます。

16分音符に1音をあてはめて、発音のタイミングを見つける

まず、「I said a」を乗り越えましょう。ここだけでも、簡単にできる方もいれば、すでに投げ出す寸前の方もいるはずです。
※歌詞や曲については、前記事の 【ラップとRAP】vol.5 ヒップホップの誕生(1)—SugarHill Gang “Rapper’s Deiight”—を確認してください。

発音から考えます。「I said a」をそれぞれ日本語で表せば、「アイ セッド ア」となります。しかし、実際の発音は絶対にこれではないことはわかってもらえると思います。
つまり、「said」の終わりと「a」が重なって、「アイセッダ」と発音しています。

もうひとつ、このラップの入り方をつかんでみましょう。
ヒップホップでは、スネアやクラップは2拍目、4拍目に入ります( 【ラップとRAP】vol.2 リズムの基本とフロウ・ダイアグラム(1)より)。このラップは4拍目のクラップが鳴ったすぐあとから歌い始めていますね。

すぐ上のエントリで、16分音符というのは、手拍子(4分音符)の半分の半分であることを説明しました。私たちが用いるフロウ・ダイアグラムは、この16分音符を最も小さな単位としています。ですから、手拍子と手拍子の間の時間を4つに分けて、その4箇所に言葉を入れるようなイメージをすれば、ラップが捉えやすくなると思います。

これらの点を意識して、ラップの入りのみを日本語で記述すると、図2のようになります。

図2
スクリーンショット 2015-02-13 0.58.29

これでも十分わかりやすくなりましたが、さらに理解を優先させるため、最低限の発音だけ残してみましょう。
つまり、一度に発音する音の、2音目以降を抜いてみるわけです。具体的には図3のようになります。

図3
スクリーンショット 2015-02-13 0.58.35

「アイセッダ」と「アセダ」では、もちろん発音の仕方は異なります。しかし、少なくとも「発音のタイミング」はかなり掴みやすくなったはずです。この手法は、今後も多用していく予定です。