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昨年発売されたw-inds.『Timeless』に収録されている「Sexy Girl」という曲について、下のようなツイートがありました。

※「橘慶太bot」という、慶太の発言を集めたであろうボットより。以下信頼して引用します。

Sexy
Girlはまずハットがズレてるっていう。ハットがずっと後ろにいて、なお歌も後ろにいて。ドラムとベースとエレピとストリングスだけなので、そのグルーヴがあれば曲が曲として成り立つというか、やっぱりメロディとグルーヴって大事なんだって改めてこの曲で感じました。[2014/7]

— w-inds.橘慶太bot (@w_KT_bot) 2015, 2月
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この発言を男性アイドルがする、ってことも驚きですが、音楽界全体を見渡してもあまり言及されていないことなので、今回はこれについて、簡単な音源を使いながら解説したいと思います。

ドラムを図解してみる

まずは、とにもかくにも「Sexy Girl」を聴いてみましょう。アルバム『Timeless』の中でも、非常にお気に入りの1曲です(下の音源はおそらくラジオ音源。できればiTunesで購入したり、アルバム買ってください!)。

※「Sexy Girl」は、05:02から。 一度曲を聴いたら、つぎはドラムだけに集中してみましょう。

「ドッツッカッツッ…」と、単純なビートが繰り返されていることはわかるでしょうか。

このリズムを単純化して表現すると、下のような音や図になります。音源と合わせて見たり聞いたりしてみてください。

音源

[audio mp3=”http://koboriakira.com/wp-content/uploads/2015/02/sexy_girl_zurenasi.mp3”][/audio]### 図解※画像をクリックすると、元の大きさの図が見れます。 sexy_girl_square

ハイハットのズレ。グルーヴが生まれる瞬間

しかし、上のようなリズム(または図)は、「Sexy Girl」のリズムとは言えません。慶太が言うように、「ハットがズレて」いないのです。

そこで、ハットをズラしましょう。ハットのみを後ろに(グリッド1つ分)ズラします。こうすることで、 ハットの鳴るタイミングが少し遅れる わけです。すると、下のようになります。

音源

[audio mp3=”http://koboriakira.com/wp-content/uploads/2015/02/sexy_girl_zureari.mp3”][/audio]### 図解※画像をクリックすると、元の大きさの図が見れます。 sexy_girl_zure ぜひ、上の音源とこの音源を何度も交互に再生してみてください。

比べ続けると、「ハットがズレて」いることが聴覚的に理解できてくると思います。 これが「Sexy Girl」のグルーヴの正体であり、カッコ良さに密接につながっているところです。

「ハットのズレ」は最近の流行

ここまでで「Sexy Girl」のリズムについて説明しました。 しかし、これは何も「Sexy Girl」だけがこういったリズムを取り入れた、つまり「Sexy Girl」だけがものすごい発明をした訳ではなく、ここ数年のヒップホップではよく見られる傾向です。

ヒップホップは、他のジャンルと比べてリズムやグルーヴを重視します。 「グルーヴとは何か?」とは非常に難しい質問なのですが、少なくとも、

グルーヴを定義する要素のひとつに「ズレ」は大きく関わります。 「ズレ」というのは、機械やパソコンで打ち込んだ「正確無比な」リズムと異なる、人間だからこそ必ず起きる「メトロノームのリズムと異なる」リズムのことを指します。

そして極端にいうと、 ヒップホップやR &B;は、この「ズレ」を意識的に利用することで発展しました。 ただ、一般的に日本のポップスは、とくに男性アイドルの楽曲において、こういった「ズレ」の利用は大変珍しいものです。 もしかすると、「Sexy Girl」のようなズレを含む曲の萌芽は、これからの日本のポップスやアイドルソングの変化を語るキッカケになるかもしれない。ということで、キーパンチをしておきました。


Kobori Akira

IT業界の社会人。最近はプロレスと音楽の話題が多め。
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