koboriakira.com

前回の記事の続きです。

前回は、J-POPでDJすることの難しさや、「繋ぎどころ」を見つける作業について書きました。 後編では、実際の繋ぎ方から書いていきたいと思います。

どうやって繋げるか

繋ぎどころを見つけても、 いきなりミックスには入りません。 まずは、その小節数を把握することから始めます。これ、初めてであれば絶対に大事です。

だいたいの繋ぎどころは4小節や8小節になってると思うんですが、たまに2小節だったり7小節(6+1って感じです)なんてのもあったりします。

で、これを覚えます。「何分何秒から何小節の繋ぎどころがあるか」をCD-Rに書いていた頃もあります(今はTraktorにCUEを打って管理しています)。

小節数をちゃんと把握すると大きなメリットがあります。それは、いま流れてるA曲の終わらせどころ(アウトロ)と、次のB曲の入りどころ(イントロ)を同じ長さでミックスできることです。

すごい単純ですよね。でも、この準備は大事です。どれだけ経験があっても、準備しないに越したことはありません。

たとえば、前編で紹介した2つの例は、繋ぎどころの小節数が同じです。だから、パッと聴いても自然に聴けるはずです。

もし繋ぎどころがズレると、A曲のアウトロがまだ終わってない間にB曲のボーカルが入ったりします。もっと嫌なパターンだと、B曲がちゃんと始まらないうちにA曲が無音になってしまう、とか。

こういうことを防ぐためにも、小節数の把握は重要です。

サビからつなぐか、間奏でつなぐか

好事家の話題ですが、私見では、繋ぎどころを間奏にするDJとサビにするDJがいる、と考えています。私は「間奏派」です(前編の2つの例がそうです)。

「サビ派」は、A曲のサビからB曲のイントロを始め、A曲のサビを少しずつ下げながらサビの終わりでB曲のボーカル(や豪華なイントロ)に繋ぎます。 そんなわけで、「サビ派」のミックスはどんどん曲が耳に入っていくような感じがします。

一方で、 「間奏派」のミックスはすこし休憩がある。「次行くぜ―!」みたいな準備期間があります。 これは曲調や好みによって分かれると思います。よろしければ、色々と試してみてください。

繋ぎどころの小節数を合わせる

上述した小節数の把握について、異なる小節数をミックスしたい場合はどうすればいいでしょうか。 私の場合は、無理矢理合わせています(笑)。

たとえば、8小節のアウトロに4小節のイントロを入れるなら、アウトロが始まってから4小節後にイントロをかけます。

2小節なら、アウトロが始まってから6小節後にかければ同じになりますね。

急に入ってくる感じはありますですが、フェーダーやフィルターである程度は違和感を薄められます。 また、私が一番好きなのは、ループを使ったミックスです。ここで、前編で紹介した「ドラムだけのパート」が活躍します。

「おしゃべりオムライス」最終回 DJMIX by コボリアキラ

by Akira Kobori

on Mixcloud

たとえば例に挙げたミックスには、私なりの腕の見せどころがありまして(笑)。 13:30頃からのPerfume「スウィートドーナッツ」から少女時代の「GEE」なのですが、「GEE」のAメロ前のドラムをループしています。「GEE」の元の構成は、こちらでご確認ください。

元のドラムパートは1小節だけですが、この中の1拍をひたすらループさせることでロングミックスが可能になりました(ちなみに「GEE」に変えたあとも、「スウィートドーナッツ」のシンセを裏で鳴らしています。こういうところに気付いてもらえると、やってる側は泣いて喜びます・笑)。

もうひとつ14:35頃では、「GEE」から「シャバダバドゥー」に繋いでいますが、これもループを使ってます。「GEE」の間奏部分のドラムをループさせて、その上に道重のボーカルが乗っています。

有名曲ほどループを使って「意識づけ」をする

ループの使用は、DJ的な面白さを見せることもできますし、何よりも様々な曲に対応することができます。16小節だろうが64小節だろうがループすれば、何とかなりますから(笑)。

あと、私が好きな手法で、**「意識付け」**というのがあります(スクラッチをしないので、ロングミックスで面白さを出すしかないんです・笑)。

たとえばORANGE RANGEの「ロコローション」。最初の4小節がドラムソロで、女性の声ネタと進んでいきます。有名な曲なので、イントロでお客さんもわかってくれる人が出てきます。

この知名度を利用して、あえてドラムをループさせながら前曲をフェードアウトさせます。すると、気付いてくれたお客さんから順に反応が出てくるので、気持ちの準備ができたところで声ネタに移行させたりします。

失敗するとちょっと寂しいんですが、ハマると楽しいです。サカナクション「アイデンティティ」は、このタイプの現状ナンバーワンで、イントロのパーカッションをループさせると、雰囲気によってはサビ以上に盛り上がって始まります(笑)。

他には、曲の途中にあるドラムソロをループさせて、その間にサイドMCに盛り上げてもらったり自分が煽ったりして、そのまま続きを流したり、次曲に差し替えたりすることもできます。

このようにドラムソロは本当に使いやすいので、素晴らしいかつドラムソロのある曲はプレイリスト候補に入れておきたいです。

エフェクターはまずフィルターのみで

最後にエフェクターです(選曲の話を書いていませんが、別の機会にやれれば、と思います)。

ミキサーに付属している、またはDJソフトに内蔵しているエフェクトがたくさんありますが、正直J-POPではあまり使いません。これは「J-POPだから」だと思います。 というのは、 お客さんはJ-POPを聴きに来ています。

これ、意外と他ジャンルと比べても厳しいところです。

たとえば、お客の好きな曲や、良いメロディの曲がかかった。このとき、DJがサビでフランジャーを使ったりして盛り上げようとしても、お客さんは冷める向きがあります。「いやいや、歌聴かせてくれよ」みたいな(笑)。

なので、私はエフェクター類にはほとんど触れません。だからテクニックも育ちません(笑・リバーブかけたり、ディレイでフェードアウトさせるぐらいです)。

かわりに、たまに使うのがフィルターです。要するに、音域は操作しても大丈夫だろう、という考えです。

たとえば、よくあるパターンとして、サビ前の「これから盛り上がる!」という手前でハイパスをかける。あるいは、じわじわと盛り上がるBメロにローパスをかける。

これはクラブミュージックでもよくある使い方でしょうか。サビには手をつけず、サビ前をフィルターでイジって盛り上げるのがベターかな、と思います。

合唱系ならハイパスをかけることも

上のルールを破るパターンがひとつだけあります。それは**「合唱」**するような曲です。

たとえば、イベントの終了間際。お客全員も良い気分になっていて、超有名曲のサビで合唱するようなシーンがあります。

このとき、自分は軽めにハイパスをかけます。ボーカルを半分くらい消して、その分をお客さんの声で埋めるような感覚です。

これ、ライブでアーティストがマイクをお客に向けるのと同じで、**「みんなの声を聴かせてよ!」**というメッセージが意外に伝わります。

合唱であれば、サビでなく合いの手でもこの手法は使えます。サザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」が好例で、「いま何時!!」の箇所とかですね(よほど声が聴こえるならフェードごと切る手もアリです)。


以上、書き殴りで恐れ多いですが、経験則をできるかぎりまとめてみました。意外と考えてやってんなー、というのがライティング後の感想です(笑)。

本当に経験則を書いただけなので、もし同じくDJをされてる方がいたらコメントいただけると、より深みのあるエントリになるかと思います。ぜひよろしくお願いします。

---最後に告知。現在BATICAという恵比寿のクラブ/バーで行われている「ろくでなし☆J-POP」というイベントにレギュラーで参加しております。 かるくアルコールを入れながら、「アハハハハこの曲なつかしー!」とか「今聴いてもこの曲はヤバいわ」とか言って楽しむイベントです。よろしければ一度、遊びにお越しください。初入場の方用の割引も用意していますし、こういうテクニック論の雑談も嫌いじゃありません(笑)。それでは。


    Kobori Akira

    IT業界の社会人。最近はプロレスと音楽の話題が多め。
    読む価値のある記事は Qiitanote に投稿します。
    過去人気だったブログ記事はこちらから。