税所篤快『若者が社会を動かすために』感想〜部屋のライトを消して社会は動くか?


熱意はよく伝わるんだけど、自分の心に響きはしなかったなー。

という、まさしく「若者」のコメント。

本書は、税所篤快さんによる最新作で、著者自身の経験と8人のインタビュー(と田村淳のとの対談)から、若者が社会を動かすために必要な要素を考える内容になっている。

『ゆとり世代の愛国心』を含めて、私が著者の書籍を読むのは2冊目(『ゆとり〜』は本人のFB告知が目に入り、応援の意味も含めて購入した)。今回は、親友が構成を担当していたこともあり、発売後にすぐ購入して読破した。

信頼できる人が構成をやっているので、読みやすさはあらかじめ保証しよう。しかし、内容は賞賛と違和感の詰め合わせ、というところ。

感想

賞賛したあとに批判してしまうと批判しか残らないので、まず先に違和感のほうから。

「独り語り」に共感はできなかった

この本を最後まで読んで解決しなかった問題がある。それは、

「この本を誰に届けたいのか?」

ということだ。この疑問は、「はじめに」を読んだときから発生していた。

「おそらくこういう人に向けてるんだろうなあ」と感じた箇所があるのだが、

「なんでそんな無謀な挑戦を続けられるんですか?」僕にそう聞いてくる若者は少なくない。きっと彼らは「自分たちに社会を動かすことなんてできない」と思っている。
[⋯]
社会を大きく動かすために必要なことは何なのか。月並みかもしれないが、僕は“人のつながり”だと思っている。
(税所篤敬『若者が社会を動かすために』、ベスト新書、2015年、5−6ページ。)

ここから、読者層は社会を動かすことを諦めている若者、あるいは、社会を動かしたいけれど行動に起こせない若者なのだろう、と推測した。

しかし、この推測を頭に入れて本書を読んでも、著者のメッセージをストレートに飲み込むことはできず、恥ずかしながら

「俺はこんなことを成し遂げたんだ! 今も最前線で俺は走っている!」

程度の読解に終わってしまった。

なぜ社会を変えなければいけないのか?

で、読み進めるうちに、ひとつの疑問が出てきた。

それは「なぜ社会を変えなければいけないのか?」という疑問だ。

僕も最初は足立区の教育を変えたくて、動き出した。生まれた場所を少しでもよくしたい、という思いが僕の活動の原点だったのだ。
(同、110ページ。)

上の熱意には理解ができる。でも、それ以上に「こっちが本音かな?」と思ったのは、下の箇所だった。

「夢中になれる何かをしたい」そんな僕を社会起業へと向かわせた原点には、二冊の本がある。
(同、19ページ。)

「一人前の男になってやる。世界に出て、修行をする」
僕は大学に入って最初に付き合っていた彼女に、突然別れを告げられた。本当に、突然のことだった。
男として、僕に何が足りなかったんだろう。もう二度とこんな思いはしたくない。さまざまな思いが去来する中で、一人前の男になるべく世界に出ることを決めた。
(同、24ページ。)

ここだけを引用するのは、なるほど卑怯かもしれない。しかし一方で、この箇所以上に、著者の熱意が伝わるものを私は見つけられなかった。

この疑問には、著者も(現時点で)明確な回答を持ちあわせていないのだと思う。もちろん、私もだ。

すべての人間は輝くべきなのか?

なぜこんなところに引っ掛かるかというと、著者が「世界を変える」ことに必要以上の正しさを置いていたり、「日本は〜、でも世界は〜」とよく耳にする論調に絡み取られているように感じたからだ。

根本的な批判をすれば、著者の人間観は「世界を変える元気のある人/無理だと思っている疲れきった人」という二項対立に支えられている。少なくとも、この本ではそのように読めてしまった。

いまの日本では、閉塞感を感じている若者、世界なんて変えられないと思っている若者は多いと思います。淳さんは、どうやったら世の中を変えられると考えていますか?
(同、250ページ。)

著者からすれば、私は「世界なんて変えられないと思っている若者」だ。そして、この分断はある種の怖さもある。

しかし、現代に生きる大人たちを見渡すと、“やりたいことをやって輝いている人”は悲しいほどに少ない。一度きりの人生なのに、どうして多くの人たちはやりたいことから離れていってしまうのだろうか。
(同、184ページ。)

上記の意見には、なるほど共感できる。

しかし、よくよく考えると、「やりたいことをやって輝いている人」が少ないことは本当に悲しいことなのかな、とも思ってしまう(あまのじゃくの面倒臭さよ)。

このことを考えたとき、大学時代に受けた労働に関する授業で、教授のある印象的な台詞を思い出した。

曰く、「ある決まった時間にこの教室の電灯を消す仕事があったとして、この仕事に従事する者を悪く言う権利は誰にも無い」

やりたいことをやって輝くのは勝手だ。輝くためにやりたいことを探すのも勝手だ。でも、やりたくないことをやって輝いていない人も必ず存在するし、その生き方が決して悲しいとは誰にも断言できない。

結局のところ、このあたりの価値観が自分にとっては大きな違和感を生み、今でも上手く消化できないポイントであった。

「発言集」としては名著

少々長くなってしまった。

批判だけで終わらすにはもったいない書籍なので(上の批判は、いわゆる穿った見方だ)、きちんと面白かったところも残しておきたい。

それは、著者が自身の体験(まさしく「つながり」)の中で得た、先輩や友人の言葉だ。拾い読みではアツさは伝わらないと思うが、いくつか拾ってみよう。

破壊的なことを外でやればやるほど日本に創造的な影響を与えられる。時代はあなたが体現したエネルギーを失っているんだよ。[⋯]君は日本人のレベルを超えた挑戦ができるステージにいるんだ。20年挑戦し続けられたら、あなたの勝ちだ。
(同、55ページ。)

はじめに描いたビジネスモデルがうまくいく例なんてほとんどない。みんなやりながら変えていきながら、生き残っていくんだ。みんなアイデアだけの空中戦になってはいけない。一番大事なのは小さくはじめること。小さくていいから成功モデルをつくることだ。
(同、92ページ。)

僕は、彼らが不利益を被っていることに憤りを覚えました。その憤りは社会に向けたものであり、いままで気づけなかった自分に向けたものでもあります。
(同、192ページ。)

他にも、著者が関わる先輩や友人の言葉から、その生き方や考え方を伺うことができた。

著者批判にならないと思うので書くが(これも狙いの一つだと思うから)、著者以上に強い関心を持った人物もたくさんいる。

とくに、インタビュー集の中でも大木洵人氏との対談は、この本のハイライトだ(3つめの引用はそれから)。

もし立ち読みをするなら、ここを読んでみてほしい。本書の魅力は、このあたりに詰まっていると感じた。


いろいろと書いたが、裏を返せば、それぐらい私たちにとっては他人事のようで実は自分事の話なのだ。

同年代なら、共感や啓発、批判や嫌悪、すべてを含めて、この本を出発点に自身について様々に考えることができると思う。

目次

  1. つながりが社会を動かす
    1. ゼロからプロジェクトを立ち上げるために
    2. ビジネスモデルを生み出すために
    3. 世界にプロジェクトを広げるために
    4. タフな環境で闘うために
    5. 変革を起こすために
  2. 社会を動かす若者たち

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