攻撃型チームの宿命(女子サッカーW杯 カメルーン戦レビュー)
先日行われた女子サッカーの日本vsカメルーンは、2−1で日本が勝ちました。これで日本の1位通貨はほぼ確実となり、とりあえず良いスタートを切ったと言えると思います。
4−2−3−1の守備
フル動画はここで確認できます。
カメルーンのフォーメーションは噂通り、4−2−3−1でした。4−2−3−1というフォーメーションは現代サッカーでは「王道」で、わが横浜F・マリノスの基本布陣でもあります。
そして、守備の際にはWG2人が下がり、CFとトップ下の2人がハイプレスをかける4−4−2のような体型になるのが基本的です。
現代サッカーでは攻撃と守備の局面でフォーメーションが変わることは当たり前 みたいです。これ、なんとなくサッカーを観ていた頃は知りませんでした。なので、サッカーを観る際はまず守備のフォーメーションを確認すると、面白さがまた増えると思います。
話を戻しまして、このフォーメーションの場合、注目するべきはWGになります。とくに、「 WGの守備参加 」が重要になってきます。なぜなら、もしWGが守備時に自陣まで戻らないと(守備参加の意識が低い、体力の限界、などが原因)、
このように6人で守ることになり、WGが守るべきだったサイドが危険な場所に早変わりするからです。
WGが守備しないとこうなる
その点で今回のカメルーン戦を観ると、WG2人は前線に張り付くことが多く、守備をほとんどしていませんでした。ヤル気が無かったというより、そういう作戦だったのではないでしょうか。
たとえば前半1分から、「 不屈のライオンは、ノーガードで殴りに来るのか 」と感じたシーンがありました。
これは日本のスローインから始まるシーンなのですが、前線にボールが入った際、カメルーンの中盤で戻ってきてる選手はボランチの2人だけなんです。さらに、ボールのほうに皆が寄っていくので、鮫島様がドフリー、というかバイタルエリアもスカスカという、非常に危険極まりないシーンでした。
NHKの解説が「カメルーンはボールを見ることが多く、人を見失う」と繰り返し言っていましたが、「守備をやらない人がいる」+「守備の仕方に穴がある」というダブルパンチによって、カメルーンの守備はあまり機能していませんでした。
カメルーンの前線4人は、自分より前にボールがあるときは守備をやるんですが、自分より後ろにボールが動くと「 あとはそっちで頼むわー 」みたいな守備になっていました。
また、守備中でもずっと攻撃のことを考えているような感じで、「もしもいま味方がボールを取ったら」みたいな状況で動いていました。そもそも前4人はポジションをどんどん入れ替えていたので、おそらくFWが4人いるようなイメージでサッカーやってるんだと思います。
その結果、自陣に押し込まれているのになぜか前に動き出すというプレーもあったりして、鮫島様のゴールが決まりました。ファンとしては「結果を残した」ってことになるのでありがたいです。
攻撃型WGの扱いの難しさ
こう書くと、「WGに守備できるやつを置けばカメルーン勝ったんじゃ」とも思えるんですが、ここがなかなか頭を悩ませるところでもあります。
というのは、カメルーンのWGは自陣に戻らなかった=日本の陣地に残っていたことになります。ということは、カメルーンは前線にさえ上手くボールが渡れば、前4人で攻撃を開始することができるわけです。これはカウンターで活きてくる点です。
カメルーンの作戦は(遅攻でも同じですが)、ボールを持ったらとにかく前線に放り込んで、前4人で突破するという、前線のタレント性に賭けたサッカーをしてきました。
コボリの父親が野球を観て「ノーガードで殴り合ってる」という表現をよくするのですが(去年のヤクルトがそうだった。8−10とかで負ける訳ですが・笑)、カメルーンはこれです。
そういう意味では、結果的に日本が2点入れてカメルーンは1点止まりでしたが、もしかすると3点とられて負けた可能性もあります。後半90分の失点でカメルーンの勢いが復活しましたが、本来なら失点するまでにカメルーンの心を折る必要がありました(神取忍ばりに)。
なので、個人的には今回の反省点は「もっと点を取れるはずだった」だと思っていますし、途中交代の大野があまりに守備的な姿勢だったことにはちょっと懸念がありました。
スイスとカメルーンの直接対決が楽しみ
そういう意味で、前回のスイスとはまったく違ったカメルーンというチームでした。 こうなると、気になるのは「現代的なサッカーをするスイスと、攻撃命のカメルーンが戦ったらどうなるんだろう 」ということなんですが、残念ながらテレビ放送は無いようです。まあ女子サッカーはそんなもんですよね。 個人的には 戦術バッハマン の持つスイスが2−1ぐらいで勝つんじゃないかな、と予想しておいて、明日の男子のシンガポール戦をまずは楽しみにしましょう。