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安室奈美恵の新作『_genic』が先日発売されました。前作『Feel』から2年経っていますが(『Queen of Hip-Pop』から10年!)コンスタントにアルバムを出し続けていて、毎回楽しませてもらっています。

安室奈美恵 New Album「_genic」 -Trial listeningof…

『_genic』の概要

『_genic』は、一言でいえば「傑作」です。これまでの彼女の作品同様、流行をしっかり取り入れるところは変わらずも、EDMに完全に傾倒した前作『Feel』よりかはポップなものも散りばめたアルバムである、というのが全体の印象でした。

特徴的なのは2点ありまして、1曲がどれも短いこと(半数の曲が3分30秒を切っていますし、14曲入って46分間というのはなかなか珍しい)と、オフィシャルアナウンスでも強調されているように「全て新曲」ということです。そして、この2つの特徴によって、アルバム全体を1曲としてミックステープのように楽しむことができました。このおかげで『_genic』は、シングル優位の現代において、珍しくコンセプチュアルな作品だと思います。

各トラックについては、下の記事が的確なレビューを書かれています。

今から書く自分の記事より愛と理解のあるレビューです(96年生まれの方だそうで、多分女性なのだろうか。和訳記事も面白いです)。 安室奈美恵 / _genic|Tell It 2 Me

ただ、それでも取り上げたくなるハイライトが2曲ありまして、まずは今作唯一のR&Bと言えるでしょう「Golden Touch」。エレクトロ系のサウンドで構築されたR&B;で、EDMが並ぶアルバムの中でも負けないパワーを持っています。久々にかわいらしいボーカルで、昔の安室ちゃんが好きな人にとっては一番入りやすい気がします。というか、コボリはこれを待ってました。w-inds.の「Spinning Around」が元ネタですかね(笑・冗談です)。※動画を視聴する場合は、ぜひ全画面で!

もう1曲が「Fashionista」。今作を象徴する曲だと思いますし、有無を言わさずアガります。「ファッショニスタ」という言葉の意味、響きともに、もっとも「安室奈美恵」的な曲であるとも感じました。

この曲の面白いところは、Aメロとサビ(Bメロ)でビートの種類が変化するところで、Aメロは8ビート、サビ(Bメロ)は4つ打ちになっています。言い換えれば、R&BとEDMを行き来するような曲_でして(Bメロがその中間のような位置づけになっているため、自然に聴ける)、なるほどこの曲はEDM期を経た安室奈美恵だからこそ受け入れられる曲かもしれません。

安室ちゃんが日本語を取り戻す日は来るか?

という感じで、楽曲として見ると本当に良いアルバムだと思いました。

それで、ここからはより勝手な話になるのですが、私見では安室奈美恵は「先端」のアーティストだと思っています。「最先端」ではありません。

安室ちゃんの曲は、どれもちょうどよい「聴いたことない!」感があります。言い方を変えれば、攻めてはいるもののバランス感覚もあり、つねに「カッコいい」ラインをキープしています。

たとえば、「B Who I Want 2 B feat. HATSUNE MIKU」は、タイトル通り初音ミクをフィーチャーした曲なんですが、これなんて上の考え方にまさしくフィットします。別のアルバムですが、『PAST<FUTURE』の収録曲「FIRST TIMER」なんかもこのタイプだと思っています(「FIRST TIMER」は本当にヤバいラップソングです)。

この事にはまったく文句はありませんし、「もっとアブない曲やれ!」とも思いません。 しかし、ひとつだけ今作に不満があるとすれば、極端に日本語が少ないことです(これは最近の安室ちゃんの曲全てに関わるのですが)。たとえば「Golden Touch」はAメロこそ日本語混じりですが、サビは全て英語で、歌詞の意味を理解できずに曲調でしか味わえないところが残念です。

安室ちゃんは、J-POPの第一線にいるアーティスト中でも「歌詞」に力のあるアーティストだと思っています。たとえば、「Baby Don’t Cry」は一部の女子を救うぐらいの力がありました(CanCam女子とか僕とか)。音楽的表現の豊かさと言葉の理解のトレードオフは昔からよくある問題ですが、安室ちゃんに関しては前者を取るべきではないと思っています。

そのような意味で、『_genic』はたしかに傑作であり、僕なんかは楽しいのですが、安室奈美恵の持つ本当の魅力は日本語を媒介することで最大化されるだろう、というエントリでした。


Kobori Akira

IT業界の社会人。最近はプロレスと音楽の話題が多め。
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