ぼくのQ姉ちゃん
Sister QのNight and Dayという曲がある。Cole Porterの名曲「Night and Day」のカバーだ。ジャズでもスタンダードなのかな? そのあたりは知らない。
なにかがキッカケでこの曲を聴いた当時(もちろん後追いではなく発売後すぐだ)、本当に衝撃が走ったのを覚えている。CDを借りて録音して、学校に行く間ずっと流していた。
そんな曲を、先週の築地を散策中に思い出したのだ。ちょうど浜離宮恩賜庭園に着いた頃だ。
私は庭園の入口に立ち尽くしたまま彼女たちの歌を聴いたあとになってやっと自分が泣いていることに気づき、誰にも見つからないように庭園を後にした。米本珈琲でわざわざコーヒーを買って庭園内で休憩しようと思っていたのにである。それからは無音で汐留周辺を歩きつづけて、気持ちが落ち着いた頃になってようやく帰った。
なぜこの曲がそれほど胸を打つのか、今でもよくわからない。客観的に分析しよう。まずシンプルにカバーであることは自分の好みだ。しかもR&B調になっている。ボーカルは? 真っ直ぐでよい。歌姫は一人もいない。かといってアイドルの歌い方でもない。アコギが入るタイプのトラックも好きなことが多い。ブレークのJ-POP感も素晴らしい。ただどれだけ要素を集めてみても、この曲の本当の魅力には届いていない気がする。
帰りの電車に乗りながらSister Qが出した全曲を聴きなおしたところで終わればよかった(私は2枚目で一気に恋が冷めたので、3,4枚目は初めて聴いた。恋が冷めるのも当然だった)。Wikipediaをスタート地点に、各メンバーについて集められる情報をすべて集めようとしてしまったのだ。食える情報を何でも食うのは悪いことではないが、野暮であることは自覚すべきだ。最寄り駅に着く頃に知ったのは、1人はちょうど今年お子さんを産んで幸せそうにXをやっていること、もう2人は10年近く前に芸能界を辞めていそうなことだった(同名の芸名を持つAV女優がいるところまで知った。そもそも彼女らの顔を気にしたことがないけれど、とりあえず映像をいくつか見たうえで「なんか違うかも」とは感じた。正解はどちらだろう。どちらでもいい)。
「マグネット・ジョーに気をつけろ」で有名なギャル(女性のキャラクターを表しているわけではなく、そういうアーティスト名なのだ)がいるが、いつかSister Qもそういう扱いになる頃が来るだろう。すっごい若い子に「コボリさん、若い頃にSister Qって聴いたことあります? いま本当に一部で再評価されてるんですよ」なんて言われたときこそは、ちゃんと笑い飛ばせるようにしよう。そのときはNight and Dayは聴かずに「フリフリレディ」を流すようにする。