この文章を、浅草公会堂、堂内の喫茶店で打っております(ほんとうは『天国』という喫茶店に行きたかったのですが、人がいっぱいでした。自動的に地獄行き〜)。
すでにご承知の通り、5年という短いような長いような歳月を経て、『M-1グランプリ』は復活しました。
「うさぎとかめ」よろしく、M-1が島田紳助の引退に合わせてスヤスヤ寝ている間に、たった5年間ではありますが、日本・世界では様々なことが起こりました。
とくにM-1に関して言えば、『THE MANZAI』という80年代からの使者によって、M-1は冬眠中に息の根を止められました。(※拙記事「THE MANZAIはM-1を殺した―中川家から博多華丸・大吉まで」をご覧ください。また、M-1以外の、より規模の大きなことについては、取り扱う資格が私にはありません。)
いや。正確には、息の根を止められた「はず」でした。 2015年、M-1はまさかの復活を雄叫びを上げます。
なぜM-1が復活したのかも、誰がこの状況を待ち望んでいたのかも、そして2015年のM-1がどうなるかも、誰も理解できていないままに、M-1は再始動しています。
できることは、とにかく会場に赴き、そして笑うだけです。
えー、現在はネタを見終えた翌日、いつもより腹筋が痛い2015年11月4日です。
いろいろな感想がありますが、ひとつ挙げれば「やっぱりM-1は「語らせる」力をまだ持っているなー」でしょうか。浅草公会堂を出た直後、口からは様々な感想が飛び出し、耳には様々な感想が飛び込んできました。THE MANZAIの予選にはこの光景は無いのでは、と思っています。 今回の予選を鑑賞するにあたって、自身に課した設定がひとつあります。それは、
「以前のM-1的な価値観をなるべく思い出しつつネタを見ること」 です。
詳しく言えば、「面白いかどうか」という単一の基準の裏に隠れた、「新しいかどうか」とか「上手いかどうか」とか「4分間に魅力が凝縮されているかどうか」、つまり「M-1らしいネタかどうか」を考えながら見ることにしました。
---結論を先に出しますと、これを気取ったお笑いヒニリストのカッコつけ発言と取らないでいただきたいのですが、 東京予選に出場した51組中、「M-1らしいな」とか、もっと言えば「決勝でやってる姿が目に浮かぶ」というコンビは、厳しめに見ると4組でした。
そして、このこと以上に痛烈に刺さったのは、 「M-1を目指して作ったネタではない」コンビが多くいた ことです。
ここで勘違いしないでいただきたいのは、「4組しか笑えなかった。残り47組はめっちゃスベってたわー」とか「このネタじゃ予選通過なんて無理やわ。おつかれさん」などとは決して思っておらず、むしろ、これこそが今年のM-1につきつけられた問いなんですが、
「M-1的な漫才」より笑える漫才がたくさんあったんですけど、どうします ⋯⋯? という、「お前、今更かよ⋯ッ!
フレッシュ!」ばりの三村ツッコミでも出てきそうな。それでいて「だってそうじゃん!」って感じの、どうしようもないタイプの問いが重くのしかかっています。
これを招いたのは紛れも無く『THE MANZAI』です。THE MANZAIがM-1の歴史をなかば引き継ぐ形になってしまったところに、博多華丸・大吉が王冠をとってしまった。(※補足というか感謝で、私のブログ記事をななめ読みすると、博多華丸・大吉が悪者みたいに扱われてるんですが、いまのところそういう炎上はありません。ありがとうございます。)
言い換えれば、面白さに新たな基準を与えたM-1の(漫才に限らず、コントにも波及はあったと思います)、その基準をTHE MANZAIは無効化してしまった訳です。これが「面白くなければテレビじゃない」のフジテレビがやった、というのは出来過ぎでしょう。
---つまり、『M-1グランプリ2015』は復活直後いきなり、ひとつの大きな分岐点を迎えることになります。その分岐とは、 「過去のM-1の歴史をそのまま持ち込み、賞レースとしての正統性を確保するか」 それとも 「直近のTHE MANZAIの歴史をそのまま持ち込み、賞レースとしての現代性を確保するか」 です。
言い換えれば、「M-1グランプリ2011」にするのか、「M-1グランプリ2015」にするのか。って感じです。M-1の歴史の連続/断絶と言ってもいいと思います。
どちらを採用するかによって、決勝進出者の顔ぶれも、かつ審査員の顔ぶれも変わります。もちろん、M-1が持つ権威性もです。後者に舵をとった場合は、松本人志が審査員席から外れる可能性すら有り得ます。
直感では、「どちらも抱えようとしてグダグダになるんじゃいか」というのが予想なんですが(笑)、正直どうなるかは、やはり誰にもわかりません。
---最後に、決勝進出予想でもしてみようと思います(いくつになっても予想は楽しいですね・笑)。 上述の通り、今回は2パターンが考えられます。 まず、M-1が正統性を確保した場合。つまり、M-1的な価値観で突き進んだ場合ですが、個人的には、
- 馬鹿よ貴方は2. セバスチャン3. 天竺鼠4. ダイタク5. ボーイフレンド6. オジンオズボーンなどなど、まだ10組ぐらいいますが、こういうメンツが上がってくると思います。個人的には、ダイタクやボーイフレンドみたいな「ああ、多分アレやるんでしょ?」みたいなコンビがとても面白くてビックリしました。裏切られる、って気持ちいいですよね。
で、もしM-1がTHE MANZAIに押し切られて、新しく歴史をつくろうとした場合ですが、そのときは1. 東京ダイナマイト2. トレンディエンジェル3. POISON GIRL BAND 4. 笑撃戦隊5. チーモンチョーチュウあたりでしょうか。正直、こっちの予想はかなり適当です。 ひとつだけ言えるのは、 今回のM-1グランプリの鍵を握るのはPOISON GIRL BANDです。 彼らが決勝に進出するか/どこで落選するかは、血眼になってチェックするつもりです。
そんな流れで個別のネタに関する話もしたいんですが、決勝が終わってからにします。それでは。
※「優しさは失敗のもと―2015年のM-1は成功するか?」で取り上げていますが、「コンビ結成15年以内」というルール変更は、いまのところそれほどの悪影響を及ぼしていません。いまのところは、ですが。