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忘備録としてのエントリですが、他の人たちのこの種の記事はいつも楽しく読めるので、その一つになれば幸いです。

以降で書いていますが、すべてSpotifyで聴けます。youtubeなどは載せていません。順不同で紹介しています。

総括

これだけは書いておく義務がありますが、 「今年聴いた曲、あるいは今年聴いたものとして思い出せる曲」のすべてがSpotify経由であることです。ですのでSpotifyに登録されていない曲は、一切出てきません。

千円札を3枚にぎりしめてアルバムを購入していたあの頃と比べれば、これがあまりにも刹那的・快楽的な音楽鑑賞であることは疑いの余地がありません。とはいえ、これを悲しむべきなのかは自信がありません。

私はもうすぐ29歳ですが、小中学校あたりはちょうどWinnyそしてWinMX(もはや歴史の授業で出てきそうな単語たちよ!)、あるいはTorrentの全盛期でして、ちょっとした洋楽ならTSUTAYAで借りるよりネットで落とすほうが楽だったチルドレンです。

iPodとWinnyが合わさることで何が起こったかと言えば、「よくわからない音楽をとりあえず落としてiPodに放り込んでおく。そのままよく聴かずに、あるいは全曲のイントロだけ聴いてあとは放置する」という行動に違和感を感じなくなった、つまり音楽への所有感覚がかなり変わりました。ライブ(フェス)やヴァイナルに対する欲望(※)は、この結果です。

※個人的な所感としては、これはリスナー側だけでなくアーティスト側にもあります。たとえば最新作をカセットテープで出すような売り方は、マーケティングやイメージ戦略以上に、「自身(の音楽)の所有がどのように所有されるか」をコントロールしたい欲望のあらわれだと考えます。

そんな青春時代を送った自分にとって、Spotifyなどのようなストリーミングサービスは「お金を払っているWinny」のようなものだと思っていました。しかしどんなメディアにも異なる点はあり、Winny時代には「mp3というモノを所有」できていましたが、Spotify時代ではmp3すらなくなり、より純粋な「音楽」だけが残りました。

Spotifyには「保存」という機能があります。しかしこれは音楽自体をハードディスクに保存する訳でなく、自分が好きだと思った曲・覚えておきたい曲をマークする程度の意味しかありません。Spotify上で我々ができる最大限のリスペクトは、こうやって音源にツバをつけていくことだけです。

繰り返し、これは決して批判的な感想ではありません。ただしこういった態度が新しい種類の悲劇を産んだことは正しいでしょう。実際に私はPUNPEEの『MODERN TIMES』について、いまだに1円たりともお金を出していません。かといってmp3を所有することによる空虚な満足感すらも無く、Spotifyの「保存」ボタンを押して、ただ彼の音楽を聴いているだけなのです。


つまりは、そんな時代のマイベストが、どれだけ「マイ」の「ベスト」なのか、という不安についての話でした。とはいえ音楽自体は何も変わっていない。変わったのはその周りであり、試されるのはその環境下での私たちの態度、とくに私たちの記憶です。

というわけで以下は、出会ってしまったせいで「いつか忘れてしまうのではないか」と病的な気持ちを引き起こしてしまうような名曲たちです。

Little Gree Monster - 私らしく生きてみたい

いきなり2016年の楽曲ですが(笑)、2017年のアルバム『Joyful Monster』に収録されているのでカウントしました。私が飼っている「女としてのアタシ」にとっての名曲は、ずっと安室奈美恵「Baby, don’t cry」でした。これを更新しそうになったのが本作です。

2番のBメロ、「鏡で嫌なところ探して隠していても 自信もない不自然なだけ個性はチャームポイントにしなきゃ輝かない」というフレーズは、さんざん擦られているフレーズでありながら彼女たちが歌った瞬間に「そうよ!」と叫ばずにはいられないものだと思います。

2番のサビ後半の娘のボーカルも胸に突き刺さります。亀田誠治プロデュース。

PUNPEE - 2057

PUNPEEのデビューアルバム『MODERN TIMES』のオープニング。interludeですが、もしかしたらこのトラックを一番聴いている可能性があります。自分じゃ絶対に作れないもので、畏怖の念しか浮かんできません。冗談でもなんでもなく、「あの始まりの曲は〜」で毎回泣いています。

ゴスペラーズ - Fly me to the disco ball

ゴスペラーズがどれだけ良いアーティストなのか。もっと日本全体に知られるべきだ、と思ってから15年ぐらいが経つでしょうか。「日本の名曲を歌う」みたいなテーマで年に1枚アルバム出してるだけでもいい身分なのに、こうやってオリジナルを、しかも3連譜のディスコに挑戦するグループを、他に知っているなら教えてほしいぐらいです。

今年発売になった『Soul Renaissence』は、ファン以外の人にもオススメできるかというと微妙なところなのですが、シングル単位でいうと、 「Fly me to the disco ball」の他にも「暁」や「Deja Vu」という傑作があります。とくに「Deja Vu」は、これぞゴスペラーズ! って種類の作品で、いま中学生活を送っている冴えない男子に聴いてほしい一曲です。

Drake - Passionfruit

Drakeは私にとってのスタープレイヤーなのですが、相変わらず素晴らしい、というのがファンの声です。ラップ・ボーカルも流石ですが、ローファイなトラックにちょうど馴染むようミキシングされたボーカルが本当にすごいと思います。

DJ CHARI, DJ TATSUKI - ビッチと会う

「Spotifyで出会った」はじめての曲ということで。クレジットに関する知識は一切ありませんが、タイトルから曲調、リリック、その全てが噛み合っていると思います。でも来年には忘れてるだろうな(笑)。

MISIA - 来るぞスリリング

『MISIA SOUL JAZZ SESSION』とタイトルから連想されるワクワク感とガックリ感が半分ずつあると思いますが、その針はワクワク側におもいっきり振って問題ありません。不勉強ながらMISIAの曲はあまり知りませんが、いくつかの新曲とカバーをまとめた本作は全曲が素晴らしいです。

黒田卓也はJTNC経由で知りましたが、個人の作品をもっと追っかけようと決めました。

AKLO, JAY’ED - Ballin’ Out

今年いちばん聴いた可能性がある作品。両アーティストとBACKLOGICの3人のコラボミニアルバム『Sorry…come back later』より。帰宅途中はこの曲と「Be What You Are」ばかり流れていた気が。ポップスとしても聴けるところが本当に好きです。

BASI - Peppermint

『LOVEBUM』も悪くはありませんでしたが、個人的にはシングル限定(?)の本作のほうがフィット感があり、夏の休日はだいたいこれが流れてました。

Scoobie Do - MI.RA.I

不勉強ながらスクービードゥーの曲はあまり知りませんが、Spotifyがなんとなく繋いでくれたおかげで、こんないい曲に出会うことができました。本作が収録されている『CRACKLACK』もこれから聴きます。

sui sui dack - swim2

Spotifyと契約してなければ絶対に知ることがなかっただろう記念に。こういうロックのほうが私にとっては「踊れるロック」です。本作が収録されている『FEEL』もこれから聴きます。

BANANALEMON - I WANNA, I WANNA

ワザとらしい「ダサさ」に対する嗅覚は鋭いつもりでして、その鼻で断言しますが(鼻がしゃべるのか?)、この曲のダサさはピュアだと思います。で、それが本当に最高。この他の曲があまりよくない気がしますが、ひきつづき追っかけたくなります。

フィロソフィーのダンス - ニュー・アタラクシア

別名義の活動で一緒にやったことがまだ信じられませんが、そんな気持ちを更に増幅させたのが本作も収録されている『ザ・ファウンダー』です。「ダンス・ファウンダー」や「ライク・ア・ゾンビ」も最高なのですが、せっかくなら今後隠れそうな名曲を紹介しておきたい。

シティポップやファンク、ディスコを土台としているアイドルですが、そこにラテンをふりかけると彼女たちとの混ざり具合がよくなる気がしています。あとボーカリストとしての十束おとはさんのポテンシャルがずっと楽しみです。

ノーナ・リーヴス - Danger Lover feat. いつか(Charisma.com)

ノーナ・リーヴスほど「聴けば聴いたで最高だな!」というアーティストもいないと思います。どうしてもヒップホップばかり聴いているので、あまり触れるチャンスが少ないですが、Spotifyによって不意を突かれるかたちで名曲を流し込まれました。いつかは、キリンジにfeat.された『AIの逃避行』も是非。

JJJ - COWHOUSE feat. YOUNG JUJU

JJJがどういうラッパーか知らないのですが(KANDYTOWNの人でしたよねたしか)、『HIKARI』は佳作でした。その中でも本作はリズムへのアプローチが面白く、よく聴いていました。

このあたりのラッパーとフランクに接することができたのも今年のニュースだった気がします。話変わりますが、ISSUGIのアルバムもなかなかよかったです。「Time」とか。

KICK THE CAN CREW - 千%

29歳のラップ好きにとってこれは外せません。新作『KICK!』については別記事を書けていませんが、KREVAが久しぶりに「J-POPへの挑戦」みたいなところから離れて、実家に帰ってきたようなトラックとラップをやっているところが、完全にいい方向に出ていると思います。

KREVA - 想い出の向こう側

そんなKREVAのソロ作品『嘘と煩悩』から。これは拙記事でも取り上げています。本作はいちばん挑戦的な作品で、次のアルバムへの期待感を高めてくれるものです。

N.E.R.D - Kites feat. Kendric Lamar, M.I.A

今年いちばん衝撃を受けた曲は、まさかの12月末に聴きました。民族風のコーラスから始まったかと思えば、3連符(スウィングですね)でラップが入ってきて、この時点でかなりカッコいいんですが、そこからまさかの808ドラムでの倍速に切り替わり(裏では最初のビート感を残した上モノが鳴っている)、「うわーやべー!」って言っているうちに終わっていました。

N.E.R.Dって「ヒップホップかつロック」みたいなイメージがあり、これまではそれほど琴線に響かなかったのですが、この曲を機に過去曲で聴き逃したものがないかチェックしています。

コボリアキラ - 朝がすべて暴くさ

そんなわけで、最後は自分の曲を。2017年が終わる直前に配信開始しました。この記事のあとに広告記事を書きますが、バースでは8分の6拍子、フックでは4分の3拍子をラップする、というちょっとしたおもしろ曲です。たまにはこういう日本語ラップを聴くのも、精神衛生上いいと思います(笑)。


Kobori Akira

IT業界の社会人。最近はプロレスと音楽の話題が多め。
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