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安室奈美恵の新作『_genic』が先日発売されました。前作『Feel』から2年経っていますが(『Queen of Hip-Pop』から10年!)コンスタントにアルバムを出し続けていて、毎回楽しませてもらっています。

安室奈美恵 New Album「_genic」 -Trial listeningof…

『_genic』の概要

『_genic』は、一言でいえば「傑作」です。これまでの彼女の作品同様、流行をしっかり取り入れるところは変わらずも、EDMに完全に傾倒した前作『Feel』よりかはポップなものも散りばめたアルバムである、というのが全体の印象でした。

特徴的なのは2点ありまして、1曲がどれも短いこと(半数の曲が3分30秒を切っていますし、14曲入って46分間というのはなかなか珍しい)と、オフィシャルアナウンスでも強調されているように「全て新曲」ということです。そして、この2つの特徴によって、アルバム全体を1曲としてミックステープのように楽しむことができました。このおかげで『_genic』は、シングル優位の現代において、珍しくコンセプチュアルな作品だと思います。

各トラックについては、下の記事が的確なレビューを書かれています。

今から書く自分の記事より愛と理解のあるレビューです(96年生まれの方だそうで、多分女性なのだろうか。和訳記事も面白いです)。 安室奈美恵 / _genic|Tell It 2 Me

ただ、それでも取り上げたくなるハイライトが2曲ありまして、まずは今作唯一のR&Bと言えるでしょう「Golden Touch」。エレクトロ系のサウンドで構築されたR&B;で、EDMが並ぶアルバムの中でも負けないパワーを持っています。久々にかわいらしいボーカルで、昔の安室ちゃんが好きな人にとっては一番入りやすい気がします。というか、コボリはこれを待ってました。w-inds.の「Spinning Around」が元ネタですかね(笑・冗談です)。※動画を視聴する場合は、ぜひ全画面で!

もう1曲が「Fashionista」。今作を象徴する曲だと思いますし、有無を言わさずアガります。「ファッショニスタ」という言葉の意味、響きともに、もっとも「安室奈美恵」的な曲であるとも感じました。

この曲の面白いところは、Aメロとサビ(Bメロ)でビートの種類が変化するところで、Aメロは8ビート、サビ(Bメロ)は4つ打ちになっています。言い換えれば、R&BとEDMを行き来するような曲_でして(Bメロがその中間のような位置づけになっているため、自然に聴ける)、なるほどこの曲はEDM期を経た安室奈美恵だからこそ受け入れられる曲かもしれません。

安室ちゃんが日本語を取り戻す日は来るか?

という感じで、楽曲として見ると本当に良いアルバムだと思いました。

それで、ここからはより勝手な話になるのですが、私見では安室奈美恵は「先端」のアーティストだと思っています。「最先端」ではありません。

安室ちゃんの曲は、どれもちょうどよい「聴いたことない!」感があります。言い方を変えれば、攻めてはいるもののバランス感覚もあり、つねに「カッコいい」ラインをキープしています。

たとえば、「B Who I Want 2 B feat. HATSUNE MIKU」は、タイトル通り初音ミクをフィーチャーした曲なんですが、これなんて上の考え方にまさしくフィットします。別のアルバムですが、『PAST<FUTURE』の収録曲「FIRST TIMER」なんかもこのタイプだと思っています(「FIRST TIMER」は本当にヤバいラップソングです)。

この事にはまったく文句はありませんし、「もっとアブない曲やれ!」とも思いません。 しかし、ひとつだけ今作に不満があるとすれば、極端に日本語が少ないことです(これは最近の安室ちゃんの曲全てに関わるのですが)。たとえば「Golden Touch」はAメロこそ日本語混じりですが、サビは全て英語で、歌詞の意味を理解できずに曲調でしか味わえないところが残念です。

安室ちゃんは、J-POPの第一線にいるアーティスト中でも「歌詞」に力のあるアーティストだと思っています。たとえば、「Baby Don’t Cry」は一部の女子を救うぐらいの力がありました(CanCam女子とか僕とか)。音楽的表現の豊かさと言葉の理解のトレードオフは昔からよくある問題ですが、安室ちゃんに関しては前者を取るべきではないと思っています。

そのような意味で、『_genic』はたしかに傑作であり、僕なんかは楽しいのですが、安室奈美恵の持つ本当の魅力は日本語を媒介することで最大化されるだろう、というエントリでした。


『Blue Blood』のレビューも書きました。よろしければ、下の記事も合わせてお読みください。 w-inds.『Blue Blood』〜ネオ・ファンクの愛撫は長いほど【けっきょく、J-POP】

IMG_0596 (Tシャツは「絶対忘れるな」)

先日、w-inds.のニューアルバム『Blue Blood』の先行予約会に行きました。こちらのイベント、サイン会も兼ねておりまして、「アルバムを予約するとサイン会に参加できる」という、まさにアイドルのイベントでした。

初めての「接触イベント」です。 会場は六本木の泉ガーデンギャラリー。中に入ると、勝負服に身を包んだ女性たち(ティーンからアダルトまで様々)が楽しそうにそれぞれの時間を過ごしていました。おそらく、

われわれ一般男性が一生見ることのできない表情だと推測されます。 咄嗟に「お前は部外者なんだぞ」と自身に忠告し、なるべく彼女たちの邪魔だけはしないようにしよう、と気を引き締めました(アルバムの予約を友人にお願いしてしまったこともその原因ですが)。

緒方くんとの会話

ちなみに、コボリには「緒方龍一」と書かれた紙が入っていました。緒方くん(アイドルなので「くん」のままで行きますが)には当ブログもお世話になっていまして、

ありがとうございます。ベッドで世論調査。http://t.co/ahpHqycX07

— 緒方龍一 (@ryu_winds) 2014, 12月
28

記事みてたら、ニヤニヤしちゃって、スタバで気持ち悪い人になりました。凄く嬉しいです。ありがとうございます。
https://t.co/paAMyMbcf8

— 緒方龍一 (@ryu_winds) 2015, 5月
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本当に恐れ多いのですが、いくつかの記事をシェアしていただきました。一昔前なら想像のできないことです。

で、会場で待つこと1時間ほど。ついに緒方くんと対面することができました。自分の前に並んだ友人がわざわざコボリを紹介してくれたおかげで、「おー、コボリくん!」とハグから始まり、スムーズに会話に入ることができました(というか、知っていただいていることに本当に恐縮してしまいました)。

話は本当に他愛もない内容です。「In Love With The Music」のリミックスをしてみたことや、今年のツアーを非常に楽しみにしていることなど…、えー、こういうレポートは会話全文載せてはじめて意味を持つことは知っているんですが、上手くまとめる能力が欠けてるみたいです(笑)。

ただ、とにかく優しかったこと、鍛えられた肉体だったこと、 いい匂いがした ことだけは皆様にもお伝えしたいと思います(笑・フゼア系の匂いだった記憶)。今回のサイン会の緒方くんの対応はファンから見ても「異例」だったようで、本当にいいタイミングで話をさせてもらいました。

『Blue Blood』が見せるかもしれないw-inds.の「完成形」

で、今日のエントリの内容はもうひとつあります。 サイン会の待ち時間の間、ずっとw-inds.の曲が流れていたんですが、その中で2曲ほど『Blue Blood』の収録曲がありました。

これが本当にいい具合でして、「w-inds.「TIMELESS」ツアー雑感(9/11@国際フォーラム)」でも書いたことなのですが、

w-inds.がどんどん《ヒップホップダンスユニット》としての完成形に近づいている ことに感動を隠せません。

まだ2曲ですから何とも言えないのですが、ミドルテンポのファンキーかつ歌謡曲っぽさもあるトラックは本当にツボで、アルバムの期待感を否(いや)が応でも高めるものでした。このトラックとも関連しますが、最新のw-inds.のインタビューを引っ張りだすと、

橘慶太「ネオ・ソウルファンクといった感じですね。昔っぽくなりすぎると古臭い感じになってしまうんで。やっぱりw-
inds.は常にモダンな感じを大事にしながら常に新しく、現行のファンクなつもりで作りました。 […]
別に僕達が早いというつもりもないですが、今世界で一番メインストリームにいるジャンルをw-inds.らしく表現するっていうのがこれまでの流れでしょうか。」
w-inds.の進化と「世界挑戦への想い」 » ドワンゴジェイピーnews -
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という発言があったりして、一部の人ならガッツポーズしながらご飯が食べられます。ちなみに、このインタビューは彼らの方向性がわかる一番のテクストです。インタビュアー、ライターのお名前が分かりませんが、本当にいい仕事です(とくに「ホーンセクションが入る」ことをしっかり記事に残しているあたり、リスペクトできます)。

とにもかくにも、自分なりに応援していたw-inds.がひとつの完成形を見せてくれそうなことは間違いない、と確信しています。八王子で彼らのアクトを見れることを楽しみにしています。余裕があれば、ツアーでやりそうな曲予想も書こうと思います。


ものすごい前に書いたw-inds.関連の記事が古いHDDから発掘されました。コボリの過去のブログは全部消えてしまったため(お金を払うのを忘れていた)、自分でもレアな発見でした。

10周年だから、多分4年前、『Another World』あたりですよね。いわゆる「当時の空気感」が残っているので、面白く読んでいただければ幸いです。

ちなみに、下の記事をちゃんとまとめたのが「w-inds.概論―w-inds.の最近の変化を5,000字で」です。すこし長いですが、ご興味あればぜひご一読ください。

---------------------------------------------------------------------------- 前回のエントリの繰り返しになりますが、w-inds.の10周年記念ライブは素晴らしいものでした。しかし、ほんの少しではありますが、わずかな「不安」を感じ取ってしまったのも真実です。

まず、最初の「Let’s get it on」を除き、セットリストのほとんどが「過去の」w-inds.像を体現したような曲が多かった点。今回のライブで僕が一番見たかったのは「未来の」w-inds.像だったので、ライブの善し悪しとは別に、この点は少し残念でした。

現在のw-inds.はアイドルでありつつも、本格的にダンス・ミュージックの世界へ参入しています。であるならば、「IT’S IN THE STARS」とまでは言いませんが、「New World」や「LOVE IS THE GREATEST THING」などの4つ打ちもの(「ドッ、ドッ、ドッ、ドッ」と低音のキックが鳴る種類の曲を指します)を増やしてもよかったと思います。

まあ、これは「不安」というよりも、一個人の「不満」でしかありません。なのですが、これを「不満」でなく「不安」たらしめる事もありました。それがベストアルバムの発売です。

“POP BEST”と”DANCE BEST”と銘打たれた2枚のベストアルバムは、否が応でも「回収」を想起させます。つまり、先日のライブと相まって、「ついに解散してしまうのではないか」と僕には感じられました。

もちろん、ベストの発売がそのまま解散を意味するわけではありません。しかし、ベストの発売が、何らかの「区切り」を表すことは明らかです。そして、「区切り」を作るからには、その後の未来図が提出されるべきでした。これが僕の「不安」の原因です。

では、あのライブで見たものは「不安」だけだったのでしょうか?

この問いに対して、ひとつの未来図を提出してみようと思います。それがソロ・パフォーマンスで橘慶太が披露した「Still with you」です。 「Still With You」は、エリック・ベネイ(Eric Benet)というR&B;の歌手の作ったバラードです。彼はこの曲をフルコーラスで歌っていました。それも、息遣いやビブラートなどはR&B;のマナーに沿って歌ったのです(ここを言葉にすべきなのですが歌唱に関するボキャブラリーが無いんですよね・苦笑)。それは、僕をライブに誘ってくれた生粋のファンである彼女が「普段と歌い方が違った」と言ったぐらいに、です。

そして、この曲が唯一と言っていいであろう、w-inds.の未来像でした。 それは前作『Another World』で見せた<表>の面である「エレクトロ」に対する<裏>の面。つまり「ブラック・ミュージック、ヒップホップ、R&B;」です(<裏>の代表の例は、『Another World』に収録されている「Don’t remind me」など)。

いや、本当は<裏>ではないのかもしれません。むしろ、本来は<裏>でなく<表>だったのでしょう。 w-inds.は、そもそもDA PUMPの弟分として、つまり「ヒップホップ・クルー」として売り出されはじめました。しかし当時を振り返ってみれば、本当にヒップホップ的な活動(麻薬を売買していた、トレーラーで生活していた)をしていたわけでなく、それは「ストリートで活動を始めた」ことや「リズミカルな曲を中心にしている」といったメッセージを伝えるためのキャッチコピーだったことは明確です(そもそも、ヒップホップのアイドル、という言葉自体が有り得ないのですが)。

このような言い方は失礼ですが、しかし、この10年は彼らを技術的・精神的に「ヒップホップ」を歌えるまでに成長させました。また、「HYBRID DREAM」でのBACH LOGIC、「Noise」でのSkybeatz・Darren Martyn、コアなところまで踏み込めば「Don’t remind me」でのAli Tennantmなど、本格的なブラック・ミュージックに挑戦するための環境も徐々に出来上がっている。というのが僕の印象です。

もしベストアルバムの発売後、w-inds.が今のエネルギーを保って新たなステージに挑むとすれば、ぜひこのような道(「未知」と誤変換されました)も考えてみてほしいと思います。

PS:以下、本当に個人的な雑感。

気持ちを込めて上記の試みを提案しましたが、これまでの経験則からはっきり言ってしまうと、ヒップホップにチャレンジすることは自殺行為に近いものです。殊に男性アイドルにおいては、既に「亡命」という意味の大所帯グループがいますし(それも日本のR&B;プロデューサーのトップであるKC松尾さんがバックにいる)、この山にぶつからないように上手くファンを獲得していく、というのは非常に難しいでしょう。

しかし、だからこそ、こういう時代にチャレンジしてほしい気持ちは強くなります。おそらく、ファンの方のほとんどは、「Nothing Is Possible」や「To My Fans」を咀嚼するのに時間がかかったのではないかと思います。バラードでも無い、だからと言って踊るには遅すぎる。でもw-inds.が歌ってるし、とりあえず何度か聴いてみたら、意外とハマってきて、しまいには思い出の曲になってしまった。なんて人も、だからこそ、いるのではないか。

それこそ、上の曲からLil Wayneの「Lolli Pop」だったりPliesの「Bust It Baby Pt.2」だったり、もっと自身に引き寄せればTrey Songzの「Red Lipstick」に熱を上げる女子高生やアラフォーの奥様が増えたら、どんなに素晴らしいか。そんなことを何年も前から妄想しているわけで、実際はこのために僕自身も曲を作っているのかもしれません。

PS.2 この記事を書いた直後に、VISION FACTORYのツイッター(@vision_factory)を発見しチェックしてみたら、w-inds.のFCライブのセットリストを公表していました。このライブでは、10周年記念とは違って最新曲を中心に組み立てていますが、もしやFCライブのようにライブが近い日程で連続するから、必然的に10周年記念では最新曲ができなかったのかも。という疑惑が浮上してきました。

どちらにせよ、この記事は半分以上が僕の妄想と勘違いによって書かれていますので(あくまで事実をもとに考えていますが)、その点を強調せねばいけないと思い、追記しました。

---------------------------------------------------------------------------- 「先見の明がある」とまでは言わないですが、このあとw-inds.が『Timeless』、「FANTASY」、「In Love With The Music」、そして『Blue Blood』と方向性を変えてきたことは、個人的にとてもラッキーというか、「待ってたぜ!!」って感じです。

よもや、現在地のw-inds.に一番近いのが「ファンク」ってのは本当に胸アツです。明日、新作の予約会?に行くつもりですが、短い時間なりに彼らにリスペクトを示しに行こうと思います。


※次戦のプレビューは下のページで。【なでしこジャパン】オーストラリア戦の展望と予想スタメン(FIFA 女子W杯2015) FIFA 女子ワールドカップカナダ2015・決勝トーナメント ― スポニチ Sponichi Annex サッカー

女子サッカーW杯の決勝トーナメント表が確定しました。日本はオランダが相手です。カメルーンもスイスも決勝にいることに、

「最終問題は1億ポイント入ります!!」「ちょっと待ってくださいよー!」 的なツッコミをかましてしまいそうですが、それはおいといて(ところでカメルーンが2−1でスイスに勝ちました。カメルーン、かなりのダークホースだったりして)。

オランダ戦は24日(水)とまだまだ先の話なのですが、最近サッカー熱が高まってきるので、勢いそのままオランダ戦のプレビューを書いておきます。一応、音楽とテレビ(とIT勉強)のブログだったはずなんですが、しょーもない男子が好きそうなものばかりハマってます(苦笑)。

オランダ戦プレビュー

まず、オランダのグループリーグのハイライト映像を載せておきます。NHKもさすがに女子W杯は再放送とかやらないんですよね。

オランダvsニュージーランド(1−0で勝ち)

オランダvs中国(0−1で負け)

オランダvsカナダ(1−1でドロー)

スカウティングの素材としてはあまりに短いですが、これらの映像を見てまず思ったのは、「 カメルーンと同じだな 」ってことでした。

カメルーンなオランダ

オランダのフォーメションはおそらく4−2−3−1。前4人(前線とトップ下)が攻撃をしかけ、守備は残り6人が担当します。普通ならば、WGの位置にいる2人を守備に戻らせるチームのほうが多いのですが、オランダもカメルーンもそんな守備的なサッカーはしません。その結果、[カメルーン戦のレビュー](http://koboriakira.com/2015/06/16/1103/“攻撃型チームの宿命(女子サッカーW杯 カメルーン戦レビュー)“)に使った画像ですが、

myboard

この部分が空いてしまうことになります。これをボランチがカバーすることになるので、結果バイタルエリアがガラ空きになることが予想されます。たとえば、カナダ戦では下のような感じです。

スクリーンショット 2015-06-18 23.10.51

空いたスペースに右WGの選手が戻ってきてくれると守備側としては嬉しいんですが、戻ってきません。「かわりにカウンターで点取るから許してね♡」って感じでしょうか。

WGとマッチアップするのはSBなので、 有吉(近賀)と宇津木(鮫島)が隙を見て上がっていくかどうか が試合のポイントのひとつです。これまでの試合からもう少し想像すれば、宮間からのパスやクロスが得点に結びつくことが多いので、宮間がSHに入るなら、SBには鮫島様を起用して積極的にオーバーラップのフェイントをかけたいところです。

もっとも、カメルーン戦の後半で佐々木監督は、それまでSBだった宇津木をボランチに、ボランチだった宮間をSHに、SHだった鮫島をSBに、それぞれ配置変えをしています。これはまさしく上記通りの配置で、カメルーン戦では得点に結びつきませんでしたが、鮫島様の判断次第では多くのチャンスを作れるフォーメーションだと思います。逆に言えば、カメルーン戦で結果を残した宮間ボランチ案のほうが現状は良いのかもしれませんが。

オランダの攻撃

ちなみにオランダの攻撃は、ミドルシュートが怖いのかなという印象です。ニュージーランド戦のゴールとか観ると、「いいトーナメント表になったなー。決勝までは楽勝や」なんて絶対言えなくなります。ああいうパワフルなシュート打つ選手、なでしこには存在しません。

個人・チーム成績 - パス成功数 - LEGENDSSTADIUM with FIFA女子ワールドカップ2015 公式動画」を参考にすると、オランダのパス成功数は12位の751回。日本が2位の1306回、カメルーンが597回なので、おそらく前線にボールを放ったあとは前4人がどうにかする作戦になるでしょう。カメルーン戦でも書きましたが、オランダは前4人の調子さえ良ければ得点できると思います。件のミドルを決めたのは11番のマルテンスという選手で、他3人もきっと強いはずです。

日本の守備の方法として考えられるのは2通りあって、 前線へのパスを封じるようにハイプレスをかけていく か、リトリートして自陣へのパスは通すけれどシュートは打たせないように守るか、のどちらかになると思います。ちなみに、カメルーン戦ではプレスを回避された結果、カメルーンFW3人vsなでしこ最終ライン4人の状況を作られて失点しました。

最後に、オランダが先制点を奪ったあとにどう出るかが分かりません。ただ、おそらく日本相手ならしっかりブロック作って守るのではないかな、と思っています。なでしこの現在の得点力およびにエクアドル戦の結果を考えると、オランダに4−4のブロックを作られたらかなり厳しいです。なでしこの理想的展開としては、ブロックを作られる前に3点ぐらい取って後はのんびり、っていうのパターンしか無いです。

見どころ

というわけで、上記をまとめますと、

  1. オランダはカメルーンのように攻撃4人、守備6人の分業制っぽい。攻撃パターンとしては最終ラインorボランチから前線へのフィードを受け取って、前4人のコンビネーションで崩してくるのではないか。
  2. 守備に関しては、両WGが戻らずにサイドのスペースが空くことが多いと予想される。
  3. なでしことしては、後方でのイージーミスを失くすのは勿論のこと、両SBのオーバーラップで数的有利をつくりたい。SBが上がっても、オランダのWGはおそらくついてこないだろう。 そこからの崩し方は分からないのですが頑張ってください。 4. リード時のオランダの動きはまだ不明だが、おそらく8人でブロックを組んでくることは予想される。そうなると得点力の低いなでしこは厳しいかもしれない。先制点を上げることが重要。
  4. 注目すべきは宮間の位置だ。カメルーン戦の前半のようなスタメンになるか、後半のようなスタメンになるか。どちらを決断するかに佐々木監督の意向が見えそう。
  5. カメルーンよりかは攻撃力が低そうなオランダなので安心してしまいそうだが、男子のシンガポール戦を思い出そう。罠はカナダにだって仕掛けられているかもしれない。

という感じです。誤りもたくさんあると思いますが、少しでもオランダ戦が楽しく観戦できれば幸いです。


今日は男子日本代表のシンガポール戦でした。結果は 0−0 ということで、久しぶりにサポーターのブーイングがテレビから聞こえてきました。ネットはさぞ盛り上がったことでしょう。

十人十色、多種多様。反省すべき点は色々あるんでしょうが、まずはシンガポールのGKマフブードにリスペクトです。日本は_23本のシュートを打ち、14本のCKと7本のFKのチャンスを得ました_ が無得点でした。

たまたま昨日「【GK論】日本代表の正GKは、なぜ西川選手ではなく、川島選手なのか? |GK分析&採点!全国どこでも出張GKコーチ!元U-20ホンジュラス代表GKコーチ山野陽嗣のGKアドバイザー業務」というエントリを読んだのですが、それを踏まえて前半の12分、17分、27分のイズワンのプレーを見ると、今回の引き分けは彼の安定したプレーを90分間集中して続けたご褒美みたいなものだと思います。

それより、ハリルホジッチが試合後の会見で「長い間、サッカーに携わってきましたけど、19回ほど決定機を作りながらこのような結果になったのは初めてです 」と言っていたのが結構衝撃的で、ハリルホジッチぐらい色んな経験している監督でもこんな発言しているようじゃ、「 もしやどんな監督が来ても… 」と血の気が引きそうになりました。

4−1−4−1で引く相手の崩し方

今回は、いわゆる「ドン引き」した相手に対して、どのように崩していけばいいのかを考えるうえで勉強になる試合でした。

まず、スタメンから。ほとんどシンガポールの攻撃がなかったのでアレですが、とりあえず4−2−3−1でセットしておきます。

myboard 今回重要なのは守備でしょう。こちらも。

myboard2

というわけで、シンガポールは2列のブロックの間にアンカーを置いた4−1−4−1でセットしていました。

香川、無視されがち。

まず、おなじみpal9999さんのブログから勉強します。4−1−4−1の崩し方について、下のように説明している箇所がありました。

基本的には、大迫と本田をアンカーの両脇に落として、そこに楔を入れてボランチに落とし、裏に走るWGにラストパスか、サイドチェンジって戦術になります。これ自体は何の問題もなく、オーソドックスな対4141戦術の一種になります。
2014年ブラジルワールドカップ 日本代表対ギリシャ代表のレビュー 「噛み合ってないチーム」 -
pal-9999のサッカーレポート

引用文中の選手について、「大迫=CF」、「本田=トップ下」です。とりあえずは「 アンカーの両脇 」がチャンスメイクのスタート地点になるようです。ガチガチに守られたとき、そこしかスペースが無いので、考えればそりゃそうですよね。

myboard3

たとえば、前半12分のシュートは、アンカーが飛び出していたので少し異なりはしますが、スペースを上手くついた速攻でした。

日本代表_vs_シンガポール代表__W杯2018・アジア2次予選____サッカー動画速報_-_Part_2

酒井からワンタッチで受け取った柴崎は、自身もワンタッチでSBとCBの間に上手くポジショニングした香川にパス。ボールを受け取った香川はターンしてすぐさまシュートしましたが、これをGKマフブードが見事弾きました。今日の主役が誕生した瞬間です。

ちなみに、ブラジルW杯以降、いつでも叩かれる香川ですが、個人的にはしっかりプレーしていたと思います。今日の負けで、また戦犯扱いされるでしょうが、もう少し応援してもバチは当たらないと思います。

それでここからが感想なのですが、そんな被害者意識(?)みたいなのもあってか、「 どうにも香川にボールが渡らないシーンが多くないか? 」と感じました。たとえば前半19分、 日本代表_vs_シンガポール代表__W杯2018・アジア2次予選____サッカー動画速報_-_Part_22

上のシーン、香川へのパスコースはあるように見えるのですがどうでしょうか。香川であれば、ここでボールを貰えば色々なことが出来るのではないかと感じました。

日本代表_vs_シンガポール代表__W杯2018・アジア2次予選____サッカー動画速報_-_Part_23

上は前半21分、香川にパスが入ってチャンスを作ったシーンです。香川はこの位置からワンタッチで宇佐美(香川の右下)に渡すことで、宇佐美を前を向けさせることに成功しました。そこあとは、バイタルエリアに侵入した長谷部につないでシュート。当然ながらこれもマフブードに弾かれましたが…。他には前半27分、香川のポジショニングを上手くつかって柴崎から宇佐美へのスルーパスもありました(オフサイド)。

このように香川にパスが入っているシーンは勿論あるのですが、総合するとパスが少なかったと思います。パスの出し手の問題ならトレーニングで解決しますが、「香川に対するチームの信頼が消えかかってる」とすると非常にマズいです。「得点力」の不足以上に「信頼」の不足は厳しい。ただの杞憂だとは思いますが、ちょっとメモしておきました。

トーシロには理解できない柴崎の交代

後半55分の大チャンスもGKに弾かれたハリルホジッチは、このあと3つの交代枠の全て使い切ってゴールを狙いに来ました。

で、この交代なんですが、正直自分には意図が掴めず、すこし混乱してしまいました。

まず、61分の「大迫IN、香川OUT」はまだ汲み取れました。大迫を入れることでポストプレーやクロスが活性化するかもしれません。これは自分もハーフタイム中にまず考えたことです。まあ、ほとんど大迫にはボールが入らなかったので、結果としては失敗です。

問題は、71分の「 原口IN、柴崎OUT 」です。柴崎のパフォーマンスが悪かったのかもしれないですが、この交代によって決定機を演出するようなパスの出し手はピッチに存在しないことになりました。

ひとつ考えられるのは、シンガポールのドン引きによって裏のスペースが無いため、前線を追い抜いてゴールを決めるような選手が欲しかった場合です。実際、後半77分には後方でボールを受け取った原口が味方に預けてスルスルと上がっていくシーンがありました。

ただ、それでもやっぱりパスの出し手がいなくなるのは厳しいんじゃ。ってのが率直な感覚です(後半82分は吉田から裏を狙うパスも出てました)。もう少し色々と話を聞いたり、戦術を理解したり、選手のことを知れば解決するのかもしれませんが…。

この交代は明日にでも談話が出てくるのを望みます。 談話によると、

(システムを)変更したのは得点を取りに行くためです。サイドアタックを期待していたので、ヘディングが上手い大迫と岡崎のふたりを前線に置いて、『クロスをもっと入れてくれ』という意味もありました。
原口に関しては、シュートを打つためにボールを運んでほしかったんです。遠目からでもシュートを狙ってくれという話もしましたが、そういったプレーはあまりなかった。ゴールまで16メートル前まで行って少し慌てていましたね。もう少しスピードアップしてシュートを打ってほしかった。
【シンガポール戦会見】ハリルホジッチ監督「ショックとまでは言わないが、それに似た感覚を持っている」 |
サッカーダイジェストWeb

ちなみに、後半78分の「武藤IN、宇佐美OUT」に関しては、宇佐美に期待し続けてもよかったかなと思いましたが、これこそ結果論です。むしろ、こういう試合を見ると、「宇佐美を途中で出す」という作戦もあるよなー、という感じ。

感想

あらためて、今日の試合は90分間粘り強く戦ったシンガポールの勝利でした。もう1回やったら日本が1点は入れていたと思います。ですが、これが一発勝負です。

おそらく、他の対戦国も今回の試合はいい教科書になったでしょう。日本は、今後すべての予選でこのような戦術を相手にすることが確実です。

そういう意味では、今回のドローは衝撃的ではありますが、気になるのはこの次です。「今日みたいな経験は初めてだ」と言ったハリルホジッチが今日みたいな経験を繰り返さないためにどのような処置を施すのか注視することになりそうです。


先日行われた女子サッカーの日本vsカメルーンは、2−1で日本が勝ちました。これで日本の1位通貨はほぼ確実となり、とりあえず良いスタートを切ったと言えると思います。

4−2−3−1の守備

フル動画はここで確認できます。

カメルーンのフォーメーションは噂通り、4−2−3−1でした。4−2−3−1というフォーメーションは現代サッカーでは「王道」で、わが横浜F・マリノスの基本布陣でもあります。

念のため、4−2−3−1のフォーメーションはこうです。 myboard

そして、守備の際にはWG2人が下がり、CFとトップ下の2人がハイプレスをかける4−4−2のような体型になるのが基本的です。

myboard ちなみに、

現代サッカーでは攻撃と守備の局面でフォーメーションが変わることは当たり前 みたいです。これ、なんとなくサッカーを観ていた頃は知りませんでした。なので、サッカーを観る際はまず守備のフォーメーションを確認すると、面白さがまた増えると思います。

話を戻しまして、このフォーメーションの場合、注目するべきはWGになります。とくに、「 WGの守備参加 」が重要になってきます。なぜなら、もしWGが守備時に自陣まで戻らないと(守備参加の意識が低い、体力の限界、などが原因)、

myboard

このように6人で守ることになり、WGが守るべきだったサイドが危険な場所に早変わりするからです。

WGが守備しないとこうなる

その点で今回のカメルーン戦を観ると、WG2人は前線に張り付くことが多く、守備をほとんどしていませんでした。ヤル気が無かったというより、そういう作戦だったのではないでしょうか。

たとえば前半1分から、「 不屈のライオンは、ノーガードで殴りに来るのか 」と感じたシーンがありました。 スクリーンショット 2015-06-16 1.56.03

これは日本のスローインから始まるシーンなのですが、前線にボールが入った際、カメルーンの中盤で戻ってきてる選手はボランチの2人だけなんです。さらに、ボールのほうに皆が寄っていくので、鮫島様がドフリー、というかバイタルエリアもスカスカという、非常に危険極まりないシーンでした。

NHKの解説が「カメルーンはボールを見ることが多く、人を見失う」と繰り返し言っていましたが、「守備をやらない人がいる」+「守備の仕方に穴がある」というダブルパンチによって、カメルーンの守備はあまり機能していませんでした。

1点目のシーンも、上の例と全く同じです。 13104527068_-_FC2動画

カメルーンの前線4人は、自分より前にボールがあるときは守備をやるんですが、自分より後ろにボールが動くと「 あとはそっちで頼むわー 」みたいな守備になっていました。

また、守備中でもずっと攻撃のことを考えているような感じで、「もしもいま味方がボールを取ったら」みたいな状況で動いていました。そもそも前4人はポジションをどんどん入れ替えていたので、おそらくFWが4人いるようなイメージでサッカーやってるんだと思います。

13104527068_-_FC2動画2

その結果、自陣に押し込まれているのになぜか前に動き出すというプレーもあったりして、鮫島様のゴールが決まりました。ファンとしては「結果を残した」ってことになるのでありがたいです。

攻撃型WGの扱いの難しさ

こう書くと、「WGに守備できるやつを置けばカメルーン勝ったんじゃ」とも思えるんですが、ここがなかなか頭を悩ませるところでもあります。

というのは、カメルーンのWGは自陣に戻らなかった=日本の陣地に残っていたことになります。ということは、カメルーンは前線にさえ上手くボールが渡れば、前4人で攻撃を開始することができるわけです。これはカウンターで活きてくる点です。

カメルーンの作戦は(遅攻でも同じですが)、ボールを持ったらとにかく前線に放り込んで、前4人で突破するという、前線のタレント性に賭けたサッカーをしてきました。

コボリの父親が野球を観て「ノーガードで殴り合ってる」という表現をよくするのですが(去年のヤクルトがそうだった。8−10とかで負ける訳ですが・笑)、カメルーンはこれです。

そういう意味では、結果的に日本が2点入れてカメルーンは1点止まりでしたが、もしかすると3点とられて負けた可能性もあります。後半90分の失点でカメルーンの勢いが復活しましたが、本来なら失点するまでにカメルーンの心を折る必要がありました(神取忍ばりに)。

なので、個人的には今回の反省点は「もっと点を取れるはずだった」だと思っていますし、途中交代の大野があまりに守備的な姿勢だったことにはちょっと懸念がありました。

スイスとカメルーンの直接対決が楽しみ

そういう意味で、前回のスイスとはまったく違ったカメルーンというチームでした。 こうなると、気になるのは「現代的なサッカーをするスイスと、攻撃命のカメルーンが戦ったらどうなるんだろう 」ということなんですが、残念ながらテレビ放送は無いようです。まあ女子サッカーはそんなもんですよね。 個人的には 戦術バッハマン の持つスイスが2−1ぐらいで勝つんじゃないかな、と予想しておいて、明日の男子のシンガポール戦をまずは楽しみにしましょう。