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12年ぶりに、中島美嘉「Love Addict」をポリリズムの観点から再評価する(1)


10代の中には知らない人も当然いるでしょうが、中島美嘉という女性シンガーがいます。

わたしの世代(1989年生まれ)にとっては、デビュー時から見ている歌手です。冬のバラードと言えば「冬の華」ですし、高校時代(かな?)にカラオケに行けば、女子はこぞって「GRAMOUROUS SKY」(映画『NANA』の主題歌)を歌っているなど、まあ牧歌的な時代でした。

かくいう私も、デビュー作から3枚目ぐらいまでは熱心に聴いていて(※1)、結構好きな歌手です。


で、今日は彼女が出した楽曲の中で、とても不思議だった曲について、雑筆しようと思います。

曲名は「Love Addict」(2ndアルバム『LOVE』に収録)。

これ、初めて聴いたのはまだ中学生だった頃、やっと自慰行為を覚えたぐらいの頃です。楽曲のオトナな雰囲気もあいまってか、聴いたあとはしばらくボーッとしてしまって、それからは何十回もコスるほど聴いてました。

もし未聴でしたら,とりあえず一度聴いてみてください。

「なんだ。全然単純じゃん」

と思うかもしれませんが、できれば中学生ぐらいの頭で聴いていただければ(笑)。

クロスリズムのポップスとして再評価する

一聴してみて、いかがでしょうか。オシャレでジャジーがゆえに、演奏の難しそうな楽曲に聴こえるでしょうか。。

実際、中島美嘉自身もこの楽曲に対しては、難しく感じていることをインタビューで告白しています。

--そういったスタイルだからこそ歌うことが出来た曲ってたくさんあると思うんですけど、例えば『Love Addict』。かなりジャズの要素が濃いナンバーですけど、あれを吸収するのってかなり難易度が高いというか。

中島美嘉:大変でした(笑)。いまだにうまくは歌えませんね。すんなり歌えることはあんまりない。なので、今も吸収中だったりするんですけど。ただライブで歌うときはそういうことは気にしないですね、上手い下手なんてどうでもいい、楽しければいい、みたいな(笑)。自分で後から聴いて「ひっどいな」って思うんですけど、「まぁいいか、楽しそうだし」って思うことにしてるんです(笑)。
中島美嘉 『BEST』インタビュー | Special | Billboard JAPAN

また、一般の方がカバーしている動画も見てみましょうか。たしかに難しそうですね(ボーカルに耳をとられると思いますが、この記事を読み終えたら次はピアノに注目してみてください。かなり簡素化されてます)。

しかし、このエントリでは、楽曲の演奏の難しさにはまったく触れません。

では、どこを扱うか。それは「Love Addict」のリズムについてです。

結論から言うと、「ジャジーでオシャレ」というイメージを剥ぎ取ると、「Love Addict」はJ-POPとしては相当難しい、というか相当「大衆的でない」ことにチャレンジしています。それは、

<クロスリズム>の利用です。

クロスリズムを使ったJ-POPは、2015年現在でも珍しいです。「Love Addict」は現在でも咀嚼しきれていない楽曲であると私は思っていますが、その理由はこれです。(※2)

以降、ドラムを付け足して解説します。ここから面白くなるから(27人に1人ぐらいは)、まだページを閉じないでくれー!(笑)

どの「リズム感」でこの曲を掴むか?

おそらくこう聴こえてる(踊る)はず

まず、「たぶん、こう聴いて、踊るんじゃないかなー」というパターンを出します。

はじめて聴いた場合、ほとんど方は、上のハイハットと同じリズムで聴くでしょう。

図にするとこんな感じです。

love1-1

キックは1小節ごと、ハイハットは1拍ごとを表しています(面倒なら覚えないでも大丈夫です)。

図を見ると、1小節(キックからキック)の間に拍(ハイハット)が3つあります。この状態、一般的には4分の3拍子(or8分の6拍子)なんて呼ばれたりします。

もしこう聴こえていたなら、それはベースに先導されているはずです。ベースとハイハットの鳴るタイミングが一緒ですよね。

シャッフルを感じる

もう少し聴いてみましょう。同じくイントロ。今度はドラムが入ってくるところからです。

2-1

こうなると、拍の取り方に少し変化(追加?)がでます。図のようなシャッフルとして聴こえてくるはずです。

「シャッフル(ビート)」というのは、3連符を使ったハネのあるリズムのことです(用語ばかりで面倒臭いですが、重要なところです)。1拍を3等分に割って、その3つの真ん中の音を抜かし、リズムをとります。

ピアノがつくり出すリズムの混沌

さて。上のようなリズムの取り方をしたとき、違和感を感じる楽器があります。それは、ピアノです。

ミックスによる気持ちよさもあって、ちょっと聴いただと違和感も無くスーッと入るかもしれません。

違和感を強調するために、スネアをピアノのタイミングで打ってみることにします。

こうすると、最初はちいさな違和感だったのが、ちょっとずつ増幅されてきませんか。

その違和感の原因は、ハイハットを除いてスネアだけで聴いてみると、よくわかるかもしれません。

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図で表すとより分かりやすいのですが、ハイハット(ベース)が3つ鳴っていたのに対して、スネア(ピアノ)は2つしか鳴っていません。

このスネアに引っ張られながら聴くと、さっきと違うリズムで「Love Addict」が耳に入ってはこないでしょうか。

あるいは、このスネア入りの音を聴きながら、最初感じたリズムをとることはできますか(もし出来て、なおかつ「気持ちいい」と感じたら、それは新しい世界の第一歩かもしれません)。

この話、長引きそう⋯⋯

随分長々と話しましたが、このエントリで伝えたいことは、次のとおりです。

1つの楽曲の中で、1小節(キックとキックの間)を3つに割るリズムと、2つに割るリズムがある。

これ、文章で読むとそれほど「ガーンッ!」って感じじゃないんですが(笑)、2種類のリズムを交互に変えながら聴くと、その違いに驚かれるはずです。

実際、私はめちゃくちゃ驚き、そして今ではこの曲の解説を書こうとしているぐらいです(笑)。


すこし疲れたので、続きはまた次に。まだクロスリズムの単語すら出てきませんでしたね(笑)。

久しぶりに長い記事になると思いますが、ゆっくりお付き合いいたければ幸いです。たまにブログをチェックして、「ああまだ更新されてないかー」とかやるのも楽しいと思いますので。

(※1)バラードのイメージがある彼女ですが、本質はダンスミュージックにこそあると思います。ただ、全て売れなかったんですよね(笑)。「Helpless Rain」は、2000年代のR&Bの筆頭として挙げても違和感の無い名作です。

(※2)いつか後述されることになりますが、実際にクロスリズムを利用したパートというのは僅かです。しかし、それでもなお、この楽曲のリズムは通常のJ-POPとはまったく異なります。

12年ぶりに、中島美嘉「Love Addict」をポリリズムの観点から再評価する(2)


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