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最近靴下を自分で履けるようになったので今日はズボンも自分で履くように促してみた。スムーズに履けて、あとは自分でシャツを着たり脱いだりできれば着替えは一人でできるようになる。嬉しくて寂しい瞬間のひとつだ。もっと寂しくなれればよい。


スターダムの2.4大阪大会は、とにかく素晴らしい試合の連続だった。見返しても捨て試合が見当たらない。3年ぶりの声出し解禁ということで、いまできる最高の試合をぶつけてきたのがよくわかる。興奮の度合いもふくめて、汚いテキストで残しておく。

スペシャルシングルマッチ - MIRAI vs 橋本千紘

まず橋本千紘というレスラーの絶対的な強さを理解した。飛びついているMIRAIをそのまま持ち上げてブレーンバスターに移行できるパワーや、最後のオブライトの美しさ。シンプルに試合単体で納得させられてしまう。

ただこの試合は、橋本に喰らいついたMIRAIが素晴らしかった。プロレスにおいて実力差というものはひとつの材料だ。まったく効かなかったラリアットが終盤に効いたのは、桜井まい同様に”スカッとする”瞬間だった。MIRAIという選手に対してこれまで特に印象を持てなかったが、一気に彼女を応援する土壌が整った。

マイクを信じれば、朱里と戦う前にもう1戦あるらしいが、この相手は本当に難しいと思う。もうジュリアとやって、ジュリアに勝った橋本が朱里を迎撃するようなシナリオしか浮かばない。どちらにせよ次の相手には相当期待したいし応援したい。

そういえば女子レスラーにとってジャーマン・スープレックスという技は、なにか特別な意味があるんだろうな。きっと調べたら歴史があるのだろう。そしてどの選手のジャーマンもそれぞれ魅力がある。いまのところ岩谷麻優鈴季すず、橋本千紘が印象に強かった。

ゴッデス・オブ・スターダム選手権 - 高橋奈七永&優宇 vs 舞華&ひめか

ゴッデス・オブ・スターダム選手権

ひめかの膝のケガは可哀想だったが、これも材料のひとつだ。

高橋奈七永のそのあとの戦いがベテランだなと思わされた。瞬時にどこを負傷しているかを把握して、どこを攻撃すればその負傷した箇所を攻撃している”ように見える”かを把握して、そこのピンポイントで攻めるところが素晴らしかった。

そして試合終盤のランニングパワーボムのあとの、ひめかの表情がいちばん印象に残った。あの表情に込められた感情を言語化できる人が小説を買いたりするのだろう。こういうのを見たいから女子プロレスを見てるとさえ言えるかもしれない。舞華がひめかを背負って退場する姿は、舞ひめファンに言わせれば”とうとい”ってやつだろう。私だってその感覚がなんとなくわかった。

あといつも思うけれど優宇のキャノンボールは、とにかくカッコいいし生で見たくなる。イージーな想起だけれど、ほぼジェフ・コブだよ。

ワンダー・オブ・スターダム選手権 - 上谷沙弥 vs 渡辺桃

ワンダー・オブ・スターダム選手権

個人的に渡辺桃という選手がすごい好きなんだけれど、どんどんデカくなっているように感じる。「もしやブル中野になっていくんじゃないか」ってぐらい期待してしまった。75kgぐらいになって、それなのにこれぐらい動けたりでもしたら、もう一生応援するだろう。今年も新日本との合同興行があるとすれば、ぜひEVILと組んでほしい。本当に良いタッグになる気がする。

上谷沙弥の良さは、一言で言えば「あぶない」に尽きるだろう。この前の白川未奈戦だけを指しているつもりはないが、自身も相手も傷つけてしまう無垢な怖さがある。友人が言っていた「安心して推せる」という表現が好きなのだけれど、上谷沙弥のファンになれる人はそんな尺度で応援なんてしていないだろう。とにかく惹きつけられてしまっているはずだ。アイドルでなくプロレスにおいてもこれは長所になり、コーナからのフットスタンプや初めて見る張り手やカミゴエ式の蹴り、どんな技も一瞬「あっ」ってなるのは彼女の持ち味だと思う。

この試合を見ながらあらためて実感するけど、女子の試合って「無駄な長さ」ってのがなくて、すべての展開が「エンターテインメントを見る」ための適切な時間に収まっているのがとてもよい。正直、新日本の試合ってはじめて観る人にとってはちょっと長く感じるんじゃないか、とずっと考えているので。

ワールド・オブ・スターダム選手権 - ジュリア vs 鈴季すず

ワールド・オブ・スターダム選手権

煽りVの段階で、選手本人よりもファンが泣いてしまっていただろう。現実の話ではない。しかしとにかくストーリーとして完璧すぎていて、こんなの見せられて泣かないファンがいるの? ってぐらい簡単に感情移入できる。夢と愛情と憎悪がぜんぶ入っている、こんな試合は次いつ見れるのだろうか。プロレスはどんなことだって起こるからこそ予想が外れることを期待するが、いまこの時点では「もうありえない」と断言したい。

登場。スターダムの歴史はまったく詳しくないけれど、ジュリアの今日の雰囲気に木村花のニュアンスを感じたのは自分だけだろうか。そして鈴季すずの表情に若さや緊張、自信と度胸を感じる。

試合開始。鈴季すずに対する声援の量に彼女自身が満足している表情を見ただけでも、もう飲みながら誰かに喋りたい気分だ。

試合はとにかく素晴らしかったけれど、いちばん感じたのはジュリアの余裕だった。ただこれは実力差があったというより、ジュリアがスターダムで経験した数年間の差だ。すずは持てるすべてを出したし、決してジュリアがすずをリードしてあげるような試合ではなかった。ただ私が感じたのは、ジュリアのほうがリングと客席を俯瞰していたような気がする。言い換えればジュリアだけを向いて試合をするすずに感動する向きもあるってことだ。私も本気で鈴季すずの勝利を願っていた。

試合のハイライトは、すずに対する声援が最骨頂に達したあとの、トップロープからのジャーマン・スープレックス”ホールド”だった。昨年の5STARSは技に表現できない攻防がピークであったが、この試合はお互いのプロレスラーとしての魅力が詰まっている。もちろん感情面や泥臭いシーンだってあるが、極力これに頼ろうとしなかったのだと思う。感情がいちばん見えたのは、すずのグラン・マエストロ・デ・テキーラを決めたあとの「カバー!」だった。

最後はジュリアのグロリアス・ドライバー、そしてノーザンライトボムで決まった。トンパチ・クイーンに対するデンジャラス・クイーン。勝敗が決まったあと、リング上には世羅りさテクラもいた。

アイシャドウの色が混じった涙は、なんでこんなに胸を打つんだろうか。一瞬目線を外したジュリアに対して鈴季すずが名前を呼びかけたとき(1:28)の、あの声色。私はこれで一気に涙腺が崩壊してしまった。鈴季すずがジュリアの本歌取りをしたときのカメラワークも素晴らしい。この試合とマイクのあと、今度は鈴季すずがジュリアを越える瞬間を観るまでは追い続けることを決意した。

そうだ。ジュリアの新曲は100%指示する。PPV経由だけれどキックの硬さ、ローパスされたピアノのブレイク、メインパートのシンセの音色、外国語のラップ。すべてがジュリアに合っていると思う。なによりもジュリアの強さや怖さ以外の面、つまり愛と孤独を表現したことが素晴らしい。試合が決まったあとの曲、つまりメインパートから2人が握手したときに流れたアウトロまでもう一度真剣に聴いてほしい(私は6回見た)。映像と音楽の関係性を伝える教材にしたいぐらいだ。仮にこの曲がハネなかったとしても、今日のこの場面だけでも作曲者と編曲者には最大の賛辞を送るべきだと思う。


試合後にTwitterを見て知ったが、この試合をテキーラ沙弥が観戦していたということが、この試合を決定づけた。アイスリボンのことなんて1ミリも知らない。それでもこれだけ感動するのだ。4,5年前から女子プロレスを応援していた人は、もう今日で人間の本質を理解したことだろう。きっと週プロで色々読めるはずだ。来週の週プロはブツとして購入して保管しようと決めた。

そのほか前哨戦ではあるけれど、レディ・Cが初めて声援を受けたり、スターライト・キッドが初めてブーイングを受けたりする瞬間も感動的だった。あらためて「すごい良い興行だったな…」と噛み締めている。


Kobori Akira

IT業界の社会人。最近はプロレスと音楽の話題が多め。
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