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どういうことかわかりませんが、中邑真輔オカダ・カズチカがファレルの「ハッピー」で踊っているのを見まして、俄然元気が出てまいりました。中邑真輔によるクラブ・ステップは永久保存モノでしょう

「なぜ背景が真っ白なの!?ディレクターは本当に『ハッピー』のことを理解してるの!?日本人はこんなにリズム感がないの!?」とか色々あると思いますが、総じてもう一度通して見れば250点満点ぐらいのスコアは叩き出してる映像だと判断します。(イャオ!は0:54あたりから)

数年前は 「もってけ!セーラーふく」 が日本で一番のラップソングで、これを安室奈美恵 feat.DOBERMAN.INCの 「FIRST TIMER」が更新した。というのが個人的な日本語ラップ史ですが、現時点ではこれをラッパーがきちんと更新してくれて、あまりに名曲すぎてファン以外誰も聴いてないのかな?と思うのが、KREVAの「ma cherie」 です。

8分の6拍子という珍しいリズムの上で難なくラップをこなすKREVAが素晴らしいのは勿論ですが、今は1バースの「ヘッドフォンで夜を取り戻すか?時のモンスターは強敵」に惚れ惚れしています。というか、菊地成孔がニコニコ動画でやっている「モダンポリリズム講座」を勉強している最中、ちょうどよいタイミングでこのラップを聴けた!という感じでしょうか。

現在連載を始めたラップ関連のエントリにも、この話がいずれ入ることを祈りますが、この曲、とくに上記の歌詞の部分はクロスリズム(ポリリズム)を理解するために適しており、もしかするとKREVA自身もこのようなリズム感によってフロウを組み立てていったのかとさえ勘ぐってしまいます。

自学のためにも解説しておくと、クロスリズムというのは、1小節を3分割(1拍4連)したものと4分割(1拍3連)したものが同時に鳴っている状態でして、楽曲に対してのノリ方が2種類ある状態でもあります(この曲の場合は、8分の6拍子なので、一般的なクロスリズムよりか単純かもしれません)。

実際に音で確認してみましょう。以下はyoutubeの音源から抜いてきたので、ぜひ良い音質で収録されているCDを買ったり借りたりして聴いてみてください。あと、いつものようにホームページが落ちたらすみません(笑)。

(1)8分の6拍子を確認 一番普通に感じるリズムです。クラップ(手拍子)の部分がアクセントです。クラップ2回で1小節分だと考えましょう。

(2)4拍子のクロスリズム pt.1上のリズムで鳴ってたハイハット(シンバル)を分解してみましょう。(1)では、1回のクラップの間にハイハットは3個入っていました。これを倍にしてつめこむと6個になります。1小節の中ではハイハットは12回鳴っている計算です。

(3)4拍子のクロスリズム pt.2前述したリズムでは、クラップの間のハイハットは6個入っています。これを今度は3個ずつのかたまりにすると、2つのかたまりになることがわかります。1小節(12個)では4つのかたまりですね。このかたまりのはじめの音をクラップにしてみましょう。

どうでしょう。これで4拍子の完成です。ハイハットの強弱を文字で説明すると、(1)では「ツ、ツ、ツ、」、(2)では「ツッ、ツッ、ツッ、」となっていましたが、(3)では「ツッッ、ツッッ、」となっています。つまり3連符で4拍を刻んでいるわけです。原曲だけを聴きつつ、(3)のリズムで乗ろうとすると最初は難しいですが、慣れると何ともいえない気持ちよさを感じるかもしれません。これがポリリズムのスタートになります。

そして、(3)のリズムで、もう一度「ヘッドフォンで〜」を聴いてみてください。ちょうどこのクラップと合うことに気づきますでしょうか。ここで自分は衝撃を受けたのです。

おそらく、KREVAはこのような考え方でこのフロウを作り上げたわけではないでしょう。しかし、少なくとも実際に鳴っている音からはこういったリズムも汲み上げることができる。この点において、「ma cherie」はこれまでの日本語ラップではあまり聴いたことのない新しさを持つ楽曲になったのだと思います。…ってことを、いずれきちんと書きます!

おまけで、ベースをイコライザーでカットしたものに、(3)のリズムで作ったドラムのループを合わせてみたので、興味ある方はこちらも。結構ノレるはずです。わかりやすいように、最初の4小節をドラムだけにしています。


Kobori Akira

IT業界の社会人。最近はプロレスと音楽の話題が多め。
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