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このブログは「明日になれば忘れてしまう」という強迫観念のもと書かれている。

昨日子どもがバイクの練習をしていると、自然と足を離してバランスを取るようになってきていた。かくれんぼをすれば、見つけてほしくて顔を出す時期はもう卒業して、大きな葉っぱで顔を隠したまま草陰に身を潜めるようになった。2択のクイズを出しては、私が間違うほうの選択肢になるようにコントロールするようになった。あさっては初めてお弁当をつくって持たせる予定なので、弁当箱も購入した。

そんなことを片っ端から忘れていくのだ。記憶はあてにならない。記録はもっとあてにならないかもしれないが、記録がないよりはマシだろう。


何故こんな序文を書いているかと言うと、11.23に観に行った「東京女子プロレスで感動させてよ’23」が最高だったからだ。忘れてしまう前に、すこしでも記録しておこう。

本大会は、有志によって企画された特別な大会だ。背景は11・23「東京女子プロレスで感動させてよ!‘23」に関して知っておいてほしいこと | KEN筆.txt息子の30年、聞きたかった コロナに消えたある母の夢:朝日新聞デジタルに詳しく書かれている。

私は今年からのファンなので、当然そんな背景は知らなかった(行く直前に上記記事を読んでやっと理解した)。しかしこの興行は絶対に見逃してはいけないだろうと直感し、チケット発売の5分前からパソコンに張り付いてチケットを用意した。


かくして北側の最前席で観戦できたのだけれど、興行の始まる直前から始まって会場を後にするまで、そのすべてが最高だった。ライターの文体をできるかぎり真似ながら記録しよう。

第1試合の中島翔子vs原宿ぽむから場外乱闘は始まった。マックス・ジ・インペイラー対策としてハイパーミサヲが仕掛けた「好きなものをリングから場外に向けて並べる」という作戦は1.47メートルの大怪獣にも当てはまり、見事に場外からの不意打ちに成功した。リング外から流れを掴みかけたぽむだったが、すぐにその流れは止められてしまう。その後はしばらく中島のペースで試合が進んだが、持ち込んだガメラ人形による攻防をぽむが制すると、必殺技のぽむ・ど・じゃすてぃすを発射。しかしこれを避けられてしまい、ノーザンライト・スープレックス・ホールドで中島が勝利。

第2試合は、まっするでお馴染みの(初見なのでまったく知らないですすみません)新沼袋怪談形式の3WAYマッチ。怪談師に扮した今林久弥の「お前だー!」の衝撃で、セコンドふくめ次々と気を失っていくレスラーたち。しかしその中で唯一、今成夢人は倒れることなく今林にカウンターを「お前だー!」をぶつける。幾度の「お前だー!」の攻防の末、今成が試合を制する。試合後に今成は、その勢いのままスーパー・ササダンゴ・マシンとアントーニオ本多、そしてこの興行のキッカケにもなった人物へ、違った「お前だー!」を決める。この興行の感動的な場面の一つとなった。

第3試合は、辰巳リカvsデモニオ・ドスのシングルマッチ。2019.8.4の鶴見青果市場と同じ顔合わせになったこの試合は、おそらく見逃し配信では見ることのできないシーンが数多くあった。ゴング後早くも場外乱闘となった両者であったが、彼らの場外は「会場の外」であった。観客を引き連れたまま会場を飛び出て、そして横断歩道を渡ると、そこはロッテリア。店外でプロレス技を決め、店内ではポテトを注文する狂気を見せた辰巳が、ヒップアタックでデモニオ・ドスを制する。

メインイベントとなる第4試合は、坂崎ユカ瑞希のマジカルシュガーラビッツにハイパーミサヲを加えたメンツと、山下実優愛野ユキ乃蒼ヒカリによる6人タッグマッチ。この試合もやはり早々に場外に飛び出すと、ハイパーミサヲが山下を花火の準備された荷台にしばりつけ、そして点火。坂崎、瑞希も手持ちのロケット花火を次々に山下へ向けて発射。気づけば乃蒼も打っていたような。煙の充満する中、会場外のトラックの上には瑞希の姿が。笑顔のままフライングボディアタックを決める。やがてリング内の攻防に戻っていくが、やはりこの試合は花火がテーマとなったか。坂崎ユカが”バーニング・ビーナス”愛野ユキに、本物の火花が散る”バーニング”マジカルメリーゴーランドで決着あり。選手だけでなくリングにすらダメージを与えるフェイバリットであった。


ハイライトをざっと書いてみたが、たぶんこのあと何度も配信を見返すことだろう。東京女子が「いま提供する」魅力が好きでハマった訳だけれど、その文化というか「なぜ現在これらのレスラーがいて、こういう試合をしてきて、それを応援してきたファンがいたのか」を超高速でインストールするような興行だった。そりゃあ10年続くわ、が第一の感想。なんで私はそこにいなかったのだ、が第二。

さらに最前席の特典として、大会の出場選手全員との集合写真も撮影してもらうことができた。しかも撮影場所はリングの上! はじめてリングに触れ、ロープをくぐり、リングの上に立つことができた。試合内容とは違った意味で、でも同じくらい感動した瞬間だった。


そんなわけで表題通り感動続きの興行だったのだけれど、本当に個人的な感動の瞬間はまさかの第2試合に訪れた。

今成選手のマイクが熱を帯び、リングを叩き出したそのときリングサイドの観客がなぜかリングに集まり、一緒になってリングを叩き始めたのだ。

あとから聞くと、FMWなどで起きた文化のひとつだったのだけれど(refs: あの大仁田厚率いる超戦闘プロレスFMWが、なぜか青森県弘前市でプレ旗揚げ戦をした観戦記 | さいとうサポート)「きっと古参の人がうまくやるのだろう」と思って自分はそのままぼーっと座って見てしまっていた。

そこに、近くにいたぽむ選手が私を手招きして、隣に誘ってくれた。そして一緒にリングを叩いた。もう一度書くけれど、原宿ぽむ選手の隣で今成選手を盛り上げたのだ。私のあの日の時間感覚は、この瞬間からめちゃくちゃになった。

この経験は本当に忘れられないものとなった。もう二度とないかもしれない。自動書記のペースで書かれたこの3000文字弱のテキストは、この経験を忘れないためのものだ。


Kobori Akira

IT業界の社会人。最近はプロレスと音楽の話題が多め。
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