2008年から始まった『キングオブコント』が、まさかここにきて一つの完成形を見せてくるとは思いませんでした。
ネットではおそらくある程度の炎上もあるでしょうけど(たとえば「けっきょく下ネタかよ」とかさ)、私は本大会を 「史上最高」 であったと断言します。
久しぶりのエントリのため文章力が極端に低下しているんですが(笑)、熱量だけで書ききっておきます。
明確な「ルール」が明らかになった年
そもそもキングオブコントは、開催年によって盛り上がったりそうでなかったりする大会でした。それには理由があると考えています。「批評のしにくさ」です。
「ネルソンズのネタはベタな設定なのに笑っちゃう」とか「GAG宮戸のブラって意味ある?」みたいな単純な感想はいくらでも言えます。
しかしキングオブコントを一種の「スポーツ」として見ながら分析することがやりづらかった。
そういった状況が、今回の大会を経るうちに「キングオブコントで勝つためにはどんなコントがよいか」、つまりキングオブコントという「スポーツ」のルールが視聴者にも伝わった。
このことがどれだけ大きな影響になるかは後々のキングオブコントを見ない限りわかりませんが、私はここからキングオブコントが一気に盛り上がりを見せることに全額ベットします(2人の読者なら、この読みを信じてもらえるはずです)。
キングオブコントのルール
今年明らかになった「キングオブコントのルール」とは何でしょうか。 それは 「シンプルさ」 と 「爆発」 です。
言い換えれば「シンプルな笑いを繰り返すこと」、そして「その中でさらに大きな盛り上がりを作り出すこと」が、2019年のキングオブコントの「攻略法」です。
これは松本のコメントによって明示されていました。
そしてどぶろっくは、この攻略法を熟知していたかはともかく、完全にこのスポーツにフィットしたネタを繰り出しました。
「イチモツ」による笑いの繰り返しと、「ついでに〜」で大笑いを積み重ねる。複雑さの欠片もない、シンプルと爆発だけを完遂したネタでした。
「いや〜、こんなことでいいんだな、って思いましたね。ずっと笑っちゃいました」とは大竹のコメントです。
ちょっと話が逸れますけど「歌ネタ」は「サビの繰り返し」と「最後の大サビ」がある訳で、ハマりさえすればキングオブコントの攻略法をすべて満たせるじゃね? ってことも明らかになりました。
バナナマン設楽の哲学とかが屋
どぶろっくの優勝以外の「事件」としては、かが屋の点数が視聴者(とくに玄人視聴者)の想像より低かったことがありました。
かが屋のネタは演技力に支えられています。個人的には、最初の花束を持って呆然としている姿が「もっとも爆発した」瞬間でした。かが屋なりには反復も盛り上がりもあったんですが、どぶろっくの後という順番の兼ね合いもあって点数はまったく伸びませんでした。
しかしその中でかが屋に対して最大級の評価をした芸人がいます。バナナマン設楽です。
僕はすごい好きでした。僕らも11年前に出てるんですけど、決まった時間で”蛍の光”をかけて時間軸をわらかせるのを説明してないってのは相当高等な技術なんです。
だから多分もっとここに爆発的な笑い声になる笑いが入ればよかったんですけど。でも、僕はすごい好きで、作り方が上手だなと思って高得点にしたんですけど、はい、残念ですね。
この引用を書いているだけでもちょっと泣けてきますけど(笑)、設楽なりのコント観が反映されたコメントでした。「爆発」だけを見るのではなく、別観点からの評点もしてあげたい、という彼の哲学が見えたと思います。
このように「誰が優勝したか」とは別に、こういったシーンを楽しむことができたのも今年の素晴らしかった点です。
というか今年は設楽のコメントが全部芯を食ってて、かつ色気もあるんですよね。さらには最終決戦ではどぶろっくに最高点をつけていることも見逃せません。このバランス感覚だったりセクシーさは、尊敬するレベルを超えて怖いぐらいです。
批評性と物語性の両輪を備えた2019年
本大会はそういったスポーツ性=批評性をわかりやすく教えてくれるだけではなく、どぶろっくが優勝することで「賞レースと関係なさそうなコンビが大爆発する」といった、番組としての面白さも存分にありました。
誇張すれば一発屋として消費されたコンビの逆襲が清々しく描かれていて、最後の江口が柄にもなく流した「ガマン汁」にヤラれてしまった人も多いハズです(私ももらいガマンした一人です)。
設楽の「どぶろっくはカッコいいなと思いました。生き様が反映されているというか」というコメントの通り、芸人が自分の武器を信じて続けた結果、思いがけないご褒美が与えられました。
番組終わりの「ごめんなさ〜い」も含めて、2人の人生がよく出ている3時間だったと思います。
今後の展望
最後に今後の展望を考えましょう。 まずある程度キングオブコントを真剣に獲りにいこうと考えているコンビであれば、絶対に上記の「攻略法」が読み取れたはずです。
いつも作っているネタとは別に「キングオブコント用」のネタが必要になるのだ 、とハッキリと腑に落ちたでしょう。
そのため来年は確実に「シンプルに爆発させる」ことをテーマとしたネタが増えるはずです。脚本の複雑さはなるべく削り落として、ひとつの面白さを反復させる。
さらにはこういったネタばかりになれば食傷気味になるので、これまで通りに演技力と脚本力で勝負するコンビもいるでしょう。少なくとも**「求められているルールに対してどうアプローチするか」** が重要になることは絶対です。
M-1が「手数論」となり、「手数論」を最終年にスリムクラブが解体してみせたように、きっと今後のキングオブコントは様々なトレンドを乗り移りながら、その年ごとの「爆発」を見せてくれるはずです。
私みたいな素人が好き勝手言ってごめんなさ〜い。では。