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母方の祖父・祖母が亡くなりました。 祖母が昨年の9月、祖父が先月ということで、どちらも急な話でした。

祖父は、良家の長男として生まれ、破天荒な青年時代を経て、繊維業や百貨店業で務めました。一方で、祖母は本当に貧しい幼少期を送っていて、育ての親から逃げるように状況して、床屋として働くようになりました。

二人は結婚後、江古田に一軒家を買いました。定年後は、長野に移り住み、畑仕事を楽しんだり研究を楽しんだりと、「晴耕雨読」を実践していました。

祖父はとにかく本・新聞・雑誌が好きでした。文学はもちろん、過去の新聞の切り抜きなどを収集していました。いわゆるコレクター気質ってやつで、記念硬貨や記念切手なども集めていました。

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祖母は、過去に床屋として働いていて、自分も幼少期はよく切ってもらいました。髪を切ってくれた部屋の隣では、自家製の味噌をつくっていました。この味噌でつくった味噌汁が、自分の味覚の一部をつくりました。

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自分が長野に遊びに行くと、必ず身長を測って、柱に印をつけてくれました。最初に測ったのは生まれてから半年後、最後に測ったのは高校1年生の頃でした。

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「家族史」のようなものを初めて考えるようになりました。告別式で会った親戚の方や友人の方と話すなかで、自分の知らなかった「おじいちゃん・おばあちゃん」像があることを知りました。

自分ができることは何だろうと思います。せっかく時間があるので、自分の家族の歴史を掘り起こしてもいいなと思いました。


「早いもので」という言葉が、あるタームをまとめるときの枕詞になることを、日記を書くとよくわかりますが、早いものでもう2月が終わりました。今月も、出したものと入れたものを箇条書きで。

2015年2月の活動

ブログ5選

制作

「食べる政治」さんで、連載を始めさせていただきました。

2015年2月のインプット

テレビ番組

『R-1ぐらんぷり2015』(2/10放送)

じゅんダビの優勝はなかなか感動しましたが、10数年にわたる不安がついに吹き出したような記事になりました。準決勝のレポートから3つも書いたので、なかなか臨場感あります。

__2015年「R-1ぐらんぷり」準決勝レポート

__2015年の「R-1ぐらんぷり」は、見なくていいかもしれない

__R-1のアイデンティティ―『R-1ぐらんぷり2015』感想と批評

『水曜日のダウンタウン』

謝罪が面白い、ってどういうことだよ!

という気持ちで、下の記事を書きました。あとは大食い柔道おもしろかったですよね。チェスボクシング(将棋ボクシング)が好きだったので、当然ながら笑ってしまいました。

__『水曜日のダウンタウン』、何が起きても笑ってしまう説

『ナカイの窓』(2/11、2/18放送)

山里ドッキリ回、ゲストMC総出演回。山里のドッキリはよくわかりませんが(笑)、そのあとのゲストMC同士のトークがすごい面白かった。『アメトーーク』で一時期「笑いの裏側」を解説するような時期があったように覚えていますが、現在これをやってくれる番組は『ナカイの窓』ぐらいでしょうか。

『ネリさまぁ〜ず 2nd SEASON』(1/31放送)

さまぁ〜ずが活躍するかどうかは、側にいる女性によって決まると言っても過言ではないような気がしています。『Qさま』の優香しかり、『神さまぁ〜ず』シリーズの青木アナしかり、『さまぁ〜ZOO』の小島瑠璃子しかり、『モヤモヤさまぁ〜ず』の大江アナ、狩野アナしかり。

『ネリさまぁ〜ず』では、愛菜のブレイクがあり、この2nd SEASONではついにサトミキが覚醒。絶対に面白くあり続けるだろうと確信しています。

『オサレもん』(2/3放送)

両者「オサレ横綱」であるチョコプラとシソンヌの対決がありましたが、これをどう見たらいいのか、いまだにわかりません。「夢の対決!」ではないけれども、番組内では持ち上げている。視聴者と番組側の乖離があるように感じています。

『きょうの料理』

小林カツ代先生による、「クラシック」な時短メニューが本当に素晴らしい。自分のつくる肉じゃがは、先生仕様です。

音楽

在日ファンク『笑うな』

日本人によるファンクの最骨頂!

原点回帰をやることが一番先鋭的だとは思っていませんでした。とくに「脈」、「不甲斐ない」、「笑うな」あたりのミドルテンポなファンクは、自分がこれまで求めていたものをくれました。昨年発売のアルバムですが、個人的には今年一番の名盤です。

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Jay Prince『BeFor Our Time』最近のヒップホップの雰囲気(非スクエアなリズム、ローファイ、メロディアスなラップ、遅いBPM、メロウな音使い、パッド、など)がたくさん入っていて。嫌味なく「いいね!」って言えるアルバム。おもわず記事を書きました。

__[【レビュー】Jay Prince『BeFor Our Time』](http://koboriakira.com/2015/02/08/744/“【レビュー】Jay Prince『BeFor Our Time』“)

Joey Bada$$『B4.DA.$$』

上に紹介したJay Princeと異なり、ビギーのような王道ヒップホップ(とくにリズム面で)。「O.C.B」(Only Child Blues)は美メロなラップで感動しますし、「Curry Chicken」で盛り上がらない人はいないでしょう。まさしく「良いアルバム」です!

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Mary J. Blige『The London Sessions』

新作を聴くたびに、「けっこう攻めるなー」と感じるメアリーさん。リード曲の「Pick Me Up」は、普通に好きなナンバーでした。 [amazonjs asin=“B00TSOOSOI” locale=“JP” title=“London Session”]

D’Angelo & The Vanguard『Black Messiah』

土着的なネバっこいグルーヴの上に、さらにネバっこいボーカルが乗る。背脂たっぷりなラーメンのようですが、胃もたれしないのは、麺や具がアッサリしているからか。つまり、音数は意外とシンプルですよね。その中でも「The Door」は名曲。「ネオカントリー・ヒップホップ」とでもジャンルづけましょうか。

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w-inds.『FANTASY』

ブログに色々と書いています。

また、一番下の記事は、橘慶太さんにも言及してもらいまして。以前は緒方龍一さんにもツイートしてもらったり、本当に恐れ多いというか、インターネットによる送り手と受け手の距離感を自然と考えることになります。mp3で買うのが一番良いと思いますが、ブツとして買いたいなら「Million Dollar Girl」収録の初回盤Aでしょう。

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櫻田潤『たのしいインフォグラフィック入門』

まだ本書の内容を体得していないので断言は難しいですが、何度か読んだかぎりは素晴らしい書籍です!

「絵の下手な人間」がどうやって図解をしていけばいいか、そのキッカケを与えてくれて、かつ手順も教えてくれます。願わくば、「っぽく」見える裏ワザみたいなのも書いてあると最高だったか(絶対にあると思うんですよね)。

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和田文夫、大西美穂『たのしい編集』

もともと教育系の編集プロダクションで働いていたこともあり、退職してからはライターの仕事を少し始めました。ただ、参考書の編集と記事の編集はまったく異なるものなので、いわゆる「編集」のことを勉強しないといけないなと感じていたところ、そういった気持ちに一番寄り添ってくれたのが本書。上の書籍と合わせて、今月はこれらの「たのしいシリーズ」を読みまくりました(笑)。

「技術」と「姿勢」の両面からアプローチしてくれる本書は、はじめて編集をやる人から、あらためて編集について向き合ってみる人まで、編集に関わる人なら誰でも読んでおきたいコラムばかりです。表紙のユーモアにも感心。

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穂積 和夫『絵本アイビー図鑑』

「待望の!」と言うべきでしょうか。古本屋でしか手に入らなかった『絵本アイビーボーイ図鑑』と『絵本アイビーギャル図鑑』を、コンパクトにまとめて直した本書は、まさしく「一家に一冊」というか、ファッションに興味の無い男性こそ手元に置いておきたいアイテムです(アイビーが好きなら『TAKE IVY』と合わせて所持したい)。

とくに現代は、雑誌も読まず、ネットのちょっとしたサブリミナル的な情報から服を買ったりすることが多いと思うので、こういった書籍は非常に重要。

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映画

『劇場版 BiSキャノンボール2014』

衝動に突き動かされて鑑賞しました。アイドルとAVに関しては、「BiSを知らない」、「キャノンボールを知らない」、「恵比寿マスカッツは知ってる」という具合ですが、一言で言えば「純粋なる失敗作」という感じでしょうか。満足する人はいないけれど、何かしら考えさせるものはある映画です(「映画」では無いと思いましたが)。


昨年発売されたw-inds.『Timeless』に収録されている「Sexy Girl」という曲について、下のようなツイートがありました。

※「橘慶太bot」という、慶太の発言を集めたであろうボットより。以下信頼して引用します。

Sexy
Girlはまずハットがズレてるっていう。ハットがずっと後ろにいて、なお歌も後ろにいて。ドラムとベースとエレピとストリングスだけなので、そのグルーヴがあれば曲が曲として成り立つというか、やっぱりメロディとグルーヴって大事なんだって改めてこの曲で感じました。[2014/7]

— w-inds.橘慶太bot (@w_KT_bot) 2015, 2月
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この発言を男性アイドルがする、ってことも驚きですが、音楽界全体を見渡してもあまり言及されていないことなので、今回はこれについて、簡単な音源を使いながら解説したいと思います。

ドラムを図解してみる

まずは、とにもかくにも「Sexy Girl」を聴いてみましょう。アルバム『Timeless』の中でも、非常にお気に入りの1曲です(下の音源はおそらくラジオ音源。できればiTunesで購入したり、アルバム買ってください!)。

※「Sexy Girl」は、05:02から。 一度曲を聴いたら、つぎはドラムだけに集中してみましょう。

「ドッツッカッツッ…」と、単純なビートが繰り返されていることはわかるでしょうか。

このリズムを単純化して表現すると、下のような音や図になります。音源と合わせて見たり聞いたりしてみてください。

音源

[audio mp3=”http://koboriakira.com/wp-content/uploads/2015/02/sexy_girl_zurenasi.mp3”][/audio]### 図解※画像をクリックすると、元の大きさの図が見れます。 sexy_girl_square

ハイハットのズレ。グルーヴが生まれる瞬間

しかし、上のようなリズム(または図)は、「Sexy Girl」のリズムとは言えません。慶太が言うように、「ハットがズレて」いないのです。

そこで、ハットをズラしましょう。ハットのみを後ろに(グリッド1つ分)ズラします。こうすることで、 ハットの鳴るタイミングが少し遅れる わけです。すると、下のようになります。

音源

[audio mp3=”http://koboriakira.com/wp-content/uploads/2015/02/sexy_girl_zureari.mp3”][/audio]### 図解※画像をクリックすると、元の大きさの図が見れます。 sexy_girl_zure ぜひ、上の音源とこの音源を何度も交互に再生してみてください。

比べ続けると、「ハットがズレて」いることが聴覚的に理解できてくると思います。 これが「Sexy Girl」のグルーヴの正体であり、カッコ良さに密接につながっているところです。

「ハットのズレ」は最近の流行

ここまでで「Sexy Girl」のリズムについて説明しました。 しかし、これは何も「Sexy Girl」だけがこういったリズムを取り入れた、つまり「Sexy Girl」だけがものすごい発明をした訳ではなく、ここ数年のヒップホップではよく見られる傾向です。

ヒップホップは、他のジャンルと比べてリズムやグルーヴを重視します。 「グルーヴとは何か?」とは非常に難しい質問なのですが、少なくとも、

グルーヴを定義する要素のひとつに「ズレ」は大きく関わります。 「ズレ」というのは、機械やパソコンで打ち込んだ「正確無比な」リズムと異なる、人間だからこそ必ず起きる「メトロノームのリズムと異なる」リズムのことを指します。

そして極端にいうと、 ヒップホップやR &B;は、この「ズレ」を意識的に利用することで発展しました。 ただ、一般的に日本のポップスは、とくに男性アイドルの楽曲において、こういった「ズレ」の利用は大変珍しいものです。 もしかすると、「Sexy Girl」のようなズレを含む曲の萌芽は、これからの日本のポップスやアイドルソングの変化を語るキッカケになるかもしれない。ということで、キーパンチをしておきました。


先日、 『水曜日のダウンタウン』 で、「ブックオフの福袋を買うやつはどうかしている説」について謝罪がありました。

先週も謝罪をしているので、一般的に考えて、2週連続で何かしらの謝罪をしている番組はかなり珍しいでしょう。

「謝罪が面白い」ことが一番の問題

番組内で謝罪することになったが、「情報番組や報道番組で取り上げる際は、一定のモラルがありますが、バラエティー番組はそれが緩くなる。うちの番組の反省会でも、やっちゃいけない教材として取り上げましたけどね」とバラエティー番組の担当者。

__[【芸能ニュース舞台裏】TBS“やらせ”疑惑で謝罪 モラルが緩いバラエティー - 芸能 - ZAKZAK
](http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-
news/news/20150207/enn1502071451011-n1.htm)

上の記事で書かれているように、いまや反面教師のように捉えられている『水曜日の〜』ですが、我々が怒るべきは「なんでヤラセなんかしたんだ!」ではなく、「なんで謝罪のパートが一番面白いんだ!反省してないだろ!? 」ってところでしょう。

当然、「ブックオフ〜」の回の放送も面白かったですが、それを遥かに超える笑いを届けた今回の謝罪は、「 もしかして、これが本当の狙いだったのか…ッ! 」とワイルドアームズ風に(わかりづらい表現で失礼します)勘ぐってしまいました。

そんな感じで、今回の件すらも飲み込んで面白くさせてしまう『水曜日の〜』の暴力性には、予想してはいたけどやはり驚きです。

もっと怒られるべき企画や番組もあった

そんなわけで、プロデューサーの藤井健太郎がこの件についてどう感じているのかは想像するしかありませんが、自分だったら「 うるせぇ 」で片付いてしまうと思いました。

__「うるせぇ。バラエティは《芸》でなく《能》の時代なんだ」という想像 というか、これで怒られるなら、もっと怒られるべき企画や放送があるんじゃないか。

たとえば、今回は企業をイジったから怒られて謝罪したわけですが、ところ変われば「 コインランドリーで年を越す人、人生に絶望してる説 」のほうが、よほどインパクトも社会的な影響も強いと思うんですよね。

全国コインランドリー連合会(実在します)は、今からでも抗議文を作成してTBSに送ったほうがいい!(そうすると、次の放送でもまた謝罪文が流れるという、以下略。)

他にも、1月9日放送の『チーム有吉』は、笑えなかった人がどんどん離脱して、番組終了時の視聴者は13人ぐらいになったことで助かりましたが、もう少し時間帯の早い頃に放送されていれば、苦情が殺到していたことでしょう。

そういう意味で、上手く記述できず恐縮ですが、今回のような謝罪が出るのは、まだ常識や倫理やルールの範囲内で片付けられる問題だからで、彼のつくる番組はもっと大きな影響を与える可能性もあると思っています。そのとき、謝罪はできるのでしょうか。

知らなくてもいいけど、「藤井の悪意」について

テレビ番組は、基本的に一切の前提情報を必要とせずに視聴することができます。しかし、『水曜日の〜』においては、前述の藤井プロデューサーの「 藤井の悪意 」という単語は頭に入れると楽しくなることは間違いないと思います。

※もちろん、以下のことは「そういう言説を理解して観てないやつが悪い」つまり「シャレが分かってないやつが出てくるとサムいよねー」なんてことを言うためではありません。

この番組のプロデューサーである藤井健太郎は、基本的に全てを「イジり倒し」ます。「ハマダー生存説」の回では、ダウンタウン松本に「このVTRは藤井の悪意を感じますよね」と言われています。

このイジり倒すという「悪意」ですが、とくに顕著なのは 「悪意」の中に「愛情」がほとんど見えてこない ところです。つまり、ただ面白くなるからイジる。面白くなくなるまでイジり倒すところが、彼の真骨頂であり、それが視聴者を爆笑の渦に巻き込んできました。

なので、彼のことを知りながら番組を視聴してる人にとっては、正直「いずれあるだろうな」ぐらいに思ってたのではないか、と推測します。

バラエティの面白いところ/恐ろしいところ

結構とっちらかってしまいましたが、まとめると、「すげー悪いヤツだなぁ」とか「なんてクソみたいな企画なんだ!」という言葉が褒め言葉になるのが、バラエティの面白いところであり、恐ろしいところだと思ってます。

以下の藤井プロデューサーの発言を引用して、また次回3月の放送を待ちたいと思います。とにかく変に終わらないでほしいなあ。

「笑いをベースに、観る人の好奇心にしっかりと応えること。そのバランスはつねに意識してますね。ナレーション等に毒っぽさが混じってしまうのは、僕の癖みたいなものかもしれません。子供の頃からそういう目線が好きだった気がします(笑)。もちろん、特定の誰かを傷つけたり悲しい思いをさせるつもりはなくて、欲しいのはあくまで毒気の先にある笑い。そこは松本さんと浜田さんが完璧に受けてくれるので、思いきった球も投げられます」

__「水曜日のダウンタウン」も絶好調! 視聴者を刺激する藤井健太郎の演出術 |
インターネットTVガイド

※藤井プロデューサー懇親のDJMIXが素晴らしかったので、ついでに。 [soundcloud url=”https://api.soundcloud.com/tracks/88976896”params=“auto_play=false&hide_related=false&show_comments=true&show_user=true&show_reposts=false&visual=true”width=“100%” height=“450” iframe=“true” /]


「いつか書こう」なんて思っているうちに時間がすごい経ってしまいました。というのは、w-inds.の最新シングル『FANTASY』のカップリングである_「Million Dollar Girl」_ についてです。

w-inds.「Million Dollar Girl」は「FANTASY」以上の傑作かもしれない

まあ、とりあえず曲を聴いてみましょう。

ハネ具合のちょうどいいリズムを貴重としつつ、少しチープな音色に感じるホーンセクションが気持ちよく絡み合い、慶太のボーカルがタイトにキメてくるアッパーなパーティーチューン。

簡単にまとめれば「 ノレて、楽しくて、カッコいい! 」という、男性アイドルのポップスとしては最高のパターンではないでしょうか(笑)。

とくに、Aメロの慶太のボーカルは、まさしく「 踊れるボーカル 」と言いますか、歯切れよくスパッと音節(一言ずつ、みたいな意味です)を区切って歌うので、聴いている側も慶太のリズム感が身体に入ってくるような感覚を覚えます。

ちなみに、歌詞は「You’re worth more than million dollar girl」とフックで提示されるように、 ド直球のラブソング 。マイコー好きな自分にとっては、やっぱりこういうストレートなラブレターを歌にしたものは聴くと泣きそうになっちゃいます(下の「Baby Be Mine」など)。 __マイケル・ジャクソン ジャクソン5和訳集 Baby Be Mine - Michael Jackson 和訳

やはり編曲はRyosuke Imai=今井了介

そして「 またお前か! 」となりますが、「Million Dollar Girl」のクレジットを見ると、やはり。アレンジャーは Ryosuke Imai=今井了介さん でした。リズムの組み立て方や音色(とくにラッパの音!)などに注目すると、「Make you mine」と似た感じがあるのがお分かりでしょうか。

※w-inds.初見の方は、ぜひ上のyoutubeだけは1分44秒間観てほしい。世界が少し変わる可能性あります。

今井了介さんの作る曲に毎回ハマってしまうのは、なんといっても 音楽界の流行をしっかり追いつつ、それをJ-POPとしても聴けるように落とし込んでいる ところ。毎回申し訳ないですが、今回も「Suits & Tie」の流れをきちんと汲んでいて、個人的に「Suits &Tie」が好き過ぎるってのもあるんですが(笑)、それを差し引いても、この技術はある種の世界標準だと思います。 ※一方で、「Suits &Tie」は実はもう2年前の作品でして、おそらく次作または次々作あたりで変化があることは当然予想されます。そのとき、今井了介氏はどのような「ネタ」を掘り出して調理するのか。w-inds.ファンとしてでなく、J-POPファンとして非常に興味があります。

「NEW WORLD」で「これからどこ目指そう/オレが連れて行くよ/まだ見たことのない世界を求めて…」なんて言い始めてから、今井了介さんには本当にすごい世界に連れてきてもらっちゃったなー、と思います。

「Sweetest Love」アレンジャーのRob Derbyshireも凄かった

ちなみに、w-inds『FANATSY』のカップリングは他にあと2つありまして、「Frozen in my heart」は申し訳無いながら「EXILEっぽい、よくできたポップス」の域を出ないのですが、 「Sweetest Love」 はなかなかの佳作でした。

こちらは編曲に Rob Derbyshire という方が関わっていて、調べてみると、かなりベテランのプロデューサーでした。 __Rob Derbyshire | High Definition

※以降、w-inds.ファンの方には恐縮ですが(一人ぐらい「オー!」ってなったら面白いですけど・笑)、マーサ・リーブスやエドウィン・スターのキーボーディストとして活動したあと、UKの名門レーベル「Dome」と契約して、フル・フレーバーというバンド(ユニットですかね?)として色々な曲を出しています。

個人的に調べた感じだと、シーシー・ペニストンをフィーチャーした「You are the universe」(ブランニュー・ヘヴィーズのカバー)あたりが良かったです。w-inds.ファンかつ洋楽ファンの方は、チェックしてみてはいかがでしょうか。

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カップリングの出来栄えからわかる、w-inds.の体力

と、長々と書いてきましたが、このエントリで言いたいことは「w-inds.のカップリング良かったよ!」ってことで(笑)、あとはオタク的な情報でした。

これは何の論理も無い、ただの信念ですが、「 カップリングはアーティストの体力を示している 」と思っていまして、カップリングが良いアーティストは即ち元気だと判断しています。

そういった意味で、w-inds.は3,4年前あたりからずっとパワフルで、いまだに飽きる兆しがありません。次のシングルも、その先に待っているアルバムも、期待してしまいます。

とりあえずは『FANTASY』を復習しながらその時を待つことにして。


前回の記事や目次などはこちらから。

正しい発音は本当に「正しい」のか?

ラップでもう1点ほど難しい点をあげると、 発音 にあります。これは日本の英語教育が抱えている問題でもありますから、私が書いたところで何の発見も面白みもありませんが、本書でも重要なことですので、書いておきましょう。

たとえば、そもそも私たちは「ヒップホップ」と書いていますが、これがすでに日本語の限界でして、本来「hiphop」は「 ヒップハップ 」と聞こえますし、もっといえば「 ヒッパッ 」と聞こえます。つまり、本書の試みは、この曲の1小節目の「hip」と「hop」ですでに挫折を迎えようとしているわけです(笑)。

百歩譲って、上のような困難だけなら何とかなるかもしれません。しかし、この他にも難しいことが2つあります。ひとつは、

単語と単語どうしをまとめて発音してしまうリエゾン について。そして、もうひとつは 辞書的/一般的な発音をラッパーがしていない ことです。

ちなみに、2つ目については私個人の見方です。英語のおしゃべりには正しい発音があるけれど、ラップにおいては、正しい発音はフロウやライムの名の下に変更があるだろうと、こういうわけです。

というわけで、いくつか困難さを説明したうえで=チャレンジが失敗したときの言い訳をたくさん作ったうえで(笑)、それでは練習にとりかかってみましょう。最初ですから、読者がまごつくぐらいスローに、1音ずつ確認するような気持ちで進めてみます。

16分音符に1音をあてはめて、発音のタイミングを見つける

まず、「 I said a 」を乗り越えましょう。ここだけでも、簡単にできる方もいれば、すでに投げ出す寸前の方もいるはずです。

※歌詞や曲については、前記事の __【ラップとRAP】vol.5 ヒップホップの誕生(1)—SugarHill Gang “Rapper’s Deiight”—を確認してください。 発音から考えます。「I said a」をそれぞれ日本語で表せば、「 アイ セッド ア 」となります。しかし、実際の発音は絶対にこれではないことはわかってもらえると思います。 つまり、「said」の終わりと「a」が重なって、「アイセッダ 」と発音しています。 もうひとつ、このラップの入り方をつかんでみましょう。

ヒップホップでは、スネアやクラップは2拍目、4拍目に入ります( __【ラップとRAP】vol.2 リズムの基本とフロウ・ダイアグラム(1)より)。このラップは4拍目のクラップが鳴ったすぐあとから歌い始めていますね。

すぐ上のエントリで、16分音符というのは、手拍子(4分音符)の半分の半分であることを説明しました。私たちが用いるフロウ・ダイアグラムは、この16分音符を最も小さな単位としています。ですから、

手拍子と手拍子の間の時間を4つに分けて、その4箇所に言葉を入れる ようなイメージをすれば、ラップが捉えやすくなると思います。

これらの点を意識して、ラップの入りのみを日本語で記述すると、 図2 のようになります。 図2 スクリーンショット 2015-02-13 0.58.29

これでも十分わかりやすくなりましたが、さらに理解を優先させるため、最低限の発音だけ残してみましょう。 つまり、

一度に発音する音の、2音目以降を抜いてみる わけです。具体的には 図3 のようになります。 図3 スクリーンショット2015-02-13 0.58.35

「アイセッダ」と「アセダ」では、もちろん発音の仕方は異なります。しかし、少なくとも「発音のタイミング」はかなり掴みやすくなったはずです。この手法は、今後も多用していく予定です。