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このフロウ・ダイアグラムは16分音符、ないしは3連符(これも後述になりますが)を捉えるときに非常に役に立ちます。Track2をフロウ・ダイアグラムで記述してみましょう(図3 )。

1小節目、1拍目の「さ」と2拍目の「し」の間に、また1つ「さ」が入りました。1拍とは4分音符のことですから、つまり、4分音符をさらに半分にした箇所に「さ」が入ったわけです。この「さ」が8分音符の位置になります。他の文字も同様ですね。

また、この「さ」の上に「&」があることを確認してください。ここで理解してもらえるように、この 「 &」は8分音符の箇所を表しています。丁寧に言うと、1拍目と2拍目の間 でもあり、手拍子をするときにて両手がもっとも離れる位置というとわかりやすいでしょうか。この **「&」の位置を、一般的に、「裏、(ウラ)」と呼びます。**対して、 数字が書いてある位置(手拍子する箇所)を「表(オモテ)」と呼びます。

オモテとウラの関係は、リズムを語るうえでは非常に重要なタームですが、本書ではそれほど必要にならないはずです。

ついでにTrack3もフロウ・ダイアグラムで記述しましょう。図4のようになることがすぐにわかる方であれば、これからの話は簡単に読めるはずです。

適当に入力した「 **ふっかつのじゅもん」**に見えなくもないですが(笑)、以上のことがらを捉えていただければ、次のエントリから起こる私の試みの成功と失敗について、共感したり冷笑したり、さまざまな読み方ができることをお約束します。それでは、お待たせいたしました。ヒップホップを練習してみましょう。



■フロウ・ダイアグラム 前述の拍、音符、小節をより理解するために、具体的には視覚的に捉えるために、本書では楽譜でなく、

「フロウ・ダイアグラム」 という表を用います。正しい初出がどこの誰によるものなのかは分かりませんが、私はこれを **『HOW TO RAP』**という、タイトルそのまんまな本からいただいています(笑)。 図を例示しながら説明しましょう。 図1 をご覧ください。

この表は、さきほど説明した拍と小節をせ視覚的に表現したものです。上段に書かれている数字は、拍を表しています(「&」は後述します)。そして、左列に書かれている数字は小節を表しています。

おなじみ「チューリップ」を、このフロウ・ダイアグラムにあてはめてみましょう( 図2)。曲は前エントリのTrack1から。

字で説明すると大変ですが、最初の出だし(1小節の1拍目)は「さ」になり、2拍目は「い」になり、同様に配置していくと、2小節目以降も完成します。図2のように表現すると、「チューリップ」が本当にシンプルな曲であることがよりわかるかと思います。


どういうことかわかりませんが、中邑真輔オカダ・カズチカがファレルの「ハッピー」で踊っているのを見まして、俄然元気が出てまいりました。中邑真輔によるクラブ・ステップは永久保存モノでしょう

「なぜ背景が真っ白なの!?ディレクターは本当に『ハッピー』のことを理解してるの!?日本人はこんなにリズム感がないの!?」とか色々あると思いますが、総じてもう一度通して見れば250点満点ぐらいのスコアは叩き出してる映像だと判断します。(イャオ!は0:54あたりから)

数年前は 「もってけ!セーラーふく」 が日本で一番のラップソングで、これを安室奈美恵 feat.DOBERMAN.INCの 「FIRST TIMER」が更新した。というのが個人的な日本語ラップ史ですが、現時点ではこれをラッパーがきちんと更新してくれて、あまりに名曲すぎてファン以外誰も聴いてないのかな?と思うのが、KREVAの「ma cherie」 です。

8分の6拍子という珍しいリズムの上で難なくラップをこなすKREVAが素晴らしいのは勿論ですが、今は1バースの「ヘッドフォンで夜を取り戻すか?時のモンスターは強敵」に惚れ惚れしています。というか、菊地成孔がニコニコ動画でやっている「モダンポリリズム講座」を勉強している最中、ちょうどよいタイミングでこのラップを聴けた!という感じでしょうか。

現在連載を始めたラップ関連のエントリにも、この話がいずれ入ることを祈りますが、この曲、とくに上記の歌詞の部分はクロスリズム(ポリリズム)を理解するために適しており、もしかするとKREVA自身もこのようなリズム感によってフロウを組み立てていったのかとさえ勘ぐってしまいます。

自学のためにも解説しておくと、クロスリズムというのは、1小節を3分割(1拍4連)したものと4分割(1拍3連)したものが同時に鳴っている状態でして、楽曲に対してのノリ方が2種類ある状態でもあります(この曲の場合は、8分の6拍子なので、一般的なクロスリズムよりか単純かもしれません)。

実際に音で確認してみましょう。以下はyoutubeの音源から抜いてきたので、ぜひ良い音質で収録されているCDを買ったり借りたりして聴いてみてください。あと、いつものようにホームページが落ちたらすみません(笑)。

(1)8分の6拍子を確認 一番普通に感じるリズムです。クラップ(手拍子)の部分がアクセントです。クラップ2回で1小節分だと考えましょう。

(2)4拍子のクロスリズム pt.1上のリズムで鳴ってたハイハット(シンバル)を分解してみましょう。(1)では、1回のクラップの間にハイハットは3個入っていました。これを倍にしてつめこむと6個になります。1小節の中ではハイハットは12回鳴っている計算です。

(3)4拍子のクロスリズム pt.2前述したリズムでは、クラップの間のハイハットは6個入っています。これを今度は3個ずつのかたまりにすると、2つのかたまりになることがわかります。1小節(12個)では4つのかたまりですね。このかたまりのはじめの音をクラップにしてみましょう。

どうでしょう。これで4拍子の完成です。ハイハットの強弱を文字で説明すると、(1)では「ツ、ツ、ツ、」、(2)では「ツッ、ツッ、ツッ、」となっていましたが、(3)では「ツッッ、ツッッ、」となっています。つまり3連符で4拍を刻んでいるわけです。原曲だけを聴きつつ、(3)のリズムで乗ろうとすると最初は難しいですが、慣れると何ともいえない気持ちよさを感じるかもしれません。これがポリリズムのスタートになります。

そして、(3)のリズムで、もう一度「ヘッドフォンで〜」を聴いてみてください。ちょうどこのクラップと合うことに気づきますでしょうか。ここで自分は衝撃を受けたのです。

おそらく、KREVAはこのような考え方でこのフロウを作り上げたわけではないでしょう。しかし、少なくとも実際に鳴っている音からはこういったリズムも汲み上げることができる。この点において、「ma cherie」はこれまでの日本語ラップではあまり聴いたことのない新しさを持つ楽曲になったのだと思います。…ってことを、いずれきちんと書きます!

おまけで、ベースをイコライザーでカットしたものに、(3)のリズムで作ったドラムのループを合わせてみたので、興味ある方はこちらも。結構ノレるはずです。わかりやすいように、最初の4小節をドラムだけにしています。


英語のラップを練習するにあたって、ここでは簡単なリズムの知識と「フロウ・ダイアグラム」のローディングができることが必須であると考えます。とはいえ、難しいことではありませんし、皆さんがふだん自然とやっていることを頭で納得したほうが、このあとの練習もやりやすくなるはず、という考えに基づいて説明することですので、ぜひザッと確認してみましょう。

■拍=beat、小節=barについて まず、どんな曲でも構いませんので、1曲流しながら合わせて手拍子をしてみてください。だいたい、その 手拍子が1拍となるはずです。 分かりやすいように、手拍子と完全に同期するメロディになっている曲として、

童謡の「チューリップ」を例に挙げましょう。「さーいーたー」の箇所で、それぞれの言葉が1拍になっています。

また、これも一般的ですが(ラップにおいては99%があてはまるので、これを絶対として進めましょう)、 1拍が4回分で1小節になります。つまり、1拍、2拍、3拍、4拍のあとは、5拍、6拍、……、と進むのではなく、また1拍、2拍、……、と循環します。つまり、

リズムというのは一直線的にただ進行するのではなく、ひとつの周期を繰り返している わけです。

「〜分音符」について

もうひとつ、リズムを理解するには4分音符などの「〜分音符」は押さえておきたいところです。

さきほど、1拍が4回分で1小節になることを説明しました。これを、1小節を基準として考えてましょう。すると、 1拍は1小節の4分の1 になります。

これが4分音符 です。つまり、1小節というひとつのかたまりを何分割したかによって、「〜符音符」かが決まるのです。

いま「分割」と表現しましたが、リズムの「分割」は「半分にすること」が基本となります。1小節(全音符とも言います)を半分にして、2分音符。2分音符を半分にして4分音符。4分音符を半分にして8分音符。8分音符を半分にして16分音符。ポピュラーなラップではだいたいここまで1小節を分割して捉えることが多いです。

16分音符までを理解してもらうために、「チューリップ」にもう一度登場してもらいましょう。「チューリップ」は手拍子と完全に同期する曲ですから、1拍=4分音符を並べて作った曲だといえます。つまり、このリズムを半分にすれば8分音符が作れ、さらに半分にすれば16分音符が作れるわけです。


私の先輩であり、音楽仲間であるneralt氏が、BCCKSというウェブサービスを利用して、ついに本を出版しました。

『RHYTHM AND FINGER DRUMMING』という名のその本では、AKAIのMPCを主とするパッド式のドラムの操作方法と、ドラミングの技術とは切っても切り離すことのできないターム——グルーヴ——について、氏ならではのインテリジェンスと誠実さを用いながら語られています。

『RHYTHM AND FINGER DRUMMING』については、末尾に解説を少しばかり書いておりますので、よろしければ拝読いただければ幸いです。

MusicTheory,Nice Music,Cool Events 音楽理論、ジャズ理論を中心とした: 《音程至上主義》をその人差し指と薬指で/『本書執筆の動機』

で、こっからは自分の話でして、neraltさんの実行力に心打たれまして(笑)、自分も以前から暖めていたことを何とか書籍にしようと現在進めております。内容は非常に簡単で、「英語のラップを練習してみよう!」という、どなたでも楽しく読めるはずのものです。

以下は、おそらく出来上がった本の「前書き」となる予定のものです。よい書籍には、必ずよい編集者・校正者がいるように、これから書くエントリがモニタの向こうにいるよき編集者の目に留まることを祈ります(まあ留まらなくても勝手に出版しますけどね・笑)。


■ヒップホップを咀嚼できなかった日本人——日本語ラップは「進化」したのか?——

2014年。20年前、10年前と比べて、いろいろなことが変わったが、その中の一つとして、ラッパーがある程度の市民権を得たことは誰もが認めざるを得ないだろう。ラッパーが面白可笑しくえがかれた時代は終わり、今後は名声的にロック・ミュージシャンと並ぶ可能性すら出てきた(ドデかい妄想としては、ZEEBRAやKREVAが亡くなった日、朝のニュース番組で大々的に取り上げられたりするわけだ)。あるいは、「私はラップが好きです」とフロウする人物を想定するとき、その「ラップ」というのは、当たり前にヒップホップ(英語のラップ)を指していたが、今では邦楽のヒップホップつまり「日本語ラップ」を指すことも一般的になったのである。

ヒップホップは、ロックやブルースなどと同様に、アメリカで生まれた音楽ジャンルである。そして、日本語ラップは、ある日自発的に日本の国土から急に誕生した文化ではなく、アメリカのヒップホップを《輸入》して始まった。実際、私が中学生、高校生だった2000年代前半の日本語ラップを取り巻く状況を思い出してみると、ディスリスペクトのひとつとして「日本語ラップはヒップホップの劣化版」という、《輸入》がゆえの運命を日本語ラップは引き受けていた。

重要なのは、このディスリスペクトには「日本語ラップはヒップホップをもとにして誕生した」という仮定が含まれていることだ。そして、本書は、その仮定を真っ向から否定する。

つまり、本書の仮定は次のようになる。

「日本人にはヒップホップは理解できなかった。しかし、日本人は『ヒップホップをやりたい』という気持ちだけで障壁を強引に乗り越え、あるいはブチ壊し、オリジナリティすらも獲得した。」

この仮定からどんなテーゼが生まれるかの考察などは、本書の目的ではない。本書の目的は、この仮定の前半の「日本人にはヒップホップは理解できなかった」ことを検証するところにある。そして、この場合の「理解」とは、歴史学者や社会学者のような「ヒップホップとは〜で、このラッパーはどこ出身で、この単語にはこういう裏の意味がある」という知識的なものではなく、もっと身体的な理解、単純にいえば「ラップが歌唱できる」ところに求める。

よって、検証方法は、「TOEIC450点程度の日本人」である平均的な英語の能力を持ち合わせる私というサンプルが、実際にヒップホップを練習/習得する過程をお見せする。という、バカだがバカ故に強力な検証方法を用いる。

以下では、ヒップホップにおける「クラシック」を取り上げ、有名な1バースをフロウ・ダイアグラムで分析する。また、私(と読者)のペースで練習しながら、ヒップホップを習得することができるか/できないかを考察する。

日本人は果たしてヒップホップを咀嚼したのか?一度口に入れたは良いが吐き出してしまった残骸を、いま、もう一度放り込んでみよう。