koboriakira.com

昨年発売されたw-inds.『Timeless』に収録されている「Sexy Girl」という曲について、下のようなツイートがありました。

※「橘慶太bot」という、慶太の発言を集めたであろうボットより。以下信頼して引用します。

Sexy
Girlはまずハットがズレてるっていう。ハットがずっと後ろにいて、なお歌も後ろにいて。ドラムとベースとエレピとストリングスだけなので、そのグルーヴがあれば曲が曲として成り立つというか、やっぱりメロディとグルーヴって大事なんだって改めてこの曲で感じました。[2014/7]

— w-inds.橘慶太bot (@w_KT_bot) 2015, 2月
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この発言を男性アイドルがする、ってことも驚きですが、音楽界全体を見渡してもあまり言及されていないことなので、今回はこれについて、簡単な音源を使いながら解説したいと思います。

ドラムを図解してみる

まずは、とにもかくにも「Sexy Girl」を聴いてみましょう。アルバム『Timeless』の中でも、非常にお気に入りの1曲です(下の音源はおそらくラジオ音源。できればiTunesで購入したり、アルバム買ってください!)。

※「Sexy Girl」は、05:02から。 一度曲を聴いたら、つぎはドラムだけに集中してみましょう。

「ドッツッカッツッ…」と、単純なビートが繰り返されていることはわかるでしょうか。

このリズムを単純化して表現すると、下のような音や図になります。音源と合わせて見たり聞いたりしてみてください。

音源

[audio mp3=”http://koboriakira.com/wp-content/uploads/2015/02/sexy_girl_zurenasi.mp3”][/audio]### 図解※画像をクリックすると、元の大きさの図が見れます。 sexy_girl_square

ハイハットのズレ。グルーヴが生まれる瞬間

しかし、上のようなリズム(または図)は、「Sexy Girl」のリズムとは言えません。慶太が言うように、「ハットがズレて」いないのです。

そこで、ハットをズラしましょう。ハットのみを後ろに(グリッド1つ分)ズラします。こうすることで、 ハットの鳴るタイミングが少し遅れる わけです。すると、下のようになります。

音源

[audio mp3=”http://koboriakira.com/wp-content/uploads/2015/02/sexy_girl_zureari.mp3”][/audio]### 図解※画像をクリックすると、元の大きさの図が見れます。 sexy_girl_zure ぜひ、上の音源とこの音源を何度も交互に再生してみてください。

比べ続けると、「ハットがズレて」いることが聴覚的に理解できてくると思います。 これが「Sexy Girl」のグルーヴの正体であり、カッコ良さに密接につながっているところです。

「ハットのズレ」は最近の流行

ここまでで「Sexy Girl」のリズムについて説明しました。 しかし、これは何も「Sexy Girl」だけがこういったリズムを取り入れた、つまり「Sexy Girl」だけがものすごい発明をした訳ではなく、ここ数年のヒップホップではよく見られる傾向です。

ヒップホップは、他のジャンルと比べてリズムやグルーヴを重視します。 「グルーヴとは何か?」とは非常に難しい質問なのですが、少なくとも、

グルーヴを定義する要素のひとつに「ズレ」は大きく関わります。 「ズレ」というのは、機械やパソコンで打ち込んだ「正確無比な」リズムと異なる、人間だからこそ必ず起きる「メトロノームのリズムと異なる」リズムのことを指します。

そして極端にいうと、 ヒップホップやR &B;は、この「ズレ」を意識的に利用することで発展しました。 ただ、一般的に日本のポップスは、とくに男性アイドルの楽曲において、こういった「ズレ」の利用は大変珍しいものです。 もしかすると、「Sexy Girl」のようなズレを含む曲の萌芽は、これからの日本のポップスやアイドルソングの変化を語るキッカケになるかもしれない。ということで、キーパンチをしておきました。


先日、 『水曜日のダウンタウン』 で、「ブックオフの福袋を買うやつはどうかしている説」について謝罪がありました。

先週も謝罪をしているので、一般的に考えて、2週連続で何かしらの謝罪をしている番組はかなり珍しいでしょう。

「謝罪が面白い」ことが一番の問題

番組内で謝罪することになったが、「情報番組や報道番組で取り上げる際は、一定のモラルがありますが、バラエティー番組はそれが緩くなる。うちの番組の反省会でも、やっちゃいけない教材として取り上げましたけどね」とバラエティー番組の担当者。

__[【芸能ニュース舞台裏】TBS“やらせ”疑惑で謝罪 モラルが緩いバラエティー - 芸能 - ZAKZAK
](http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-
news/news/20150207/enn1502071451011-n1.htm)

上の記事で書かれているように、いまや反面教師のように捉えられている『水曜日の〜』ですが、我々が怒るべきは「なんでヤラセなんかしたんだ!」ではなく、「なんで謝罪のパートが一番面白いんだ!反省してないだろ!? 」ってところでしょう。

当然、「ブックオフ〜」の回の放送も面白かったですが、それを遥かに超える笑いを届けた今回の謝罪は、「 もしかして、これが本当の狙いだったのか…ッ! 」とワイルドアームズ風に(わかりづらい表現で失礼します)勘ぐってしまいました。

そんな感じで、今回の件すらも飲み込んで面白くさせてしまう『水曜日の〜』の暴力性には、予想してはいたけどやはり驚きです。

もっと怒られるべき企画や番組もあった

そんなわけで、プロデューサーの藤井健太郎がこの件についてどう感じているのかは想像するしかありませんが、自分だったら「 うるせぇ 」で片付いてしまうと思いました。

__「うるせぇ。バラエティは《芸》でなく《能》の時代なんだ」という想像 というか、これで怒られるなら、もっと怒られるべき企画や放送があるんじゃないか。

たとえば、今回は企業をイジったから怒られて謝罪したわけですが、ところ変われば「 コインランドリーで年を越す人、人生に絶望してる説 」のほうが、よほどインパクトも社会的な影響も強いと思うんですよね。

全国コインランドリー連合会(実在します)は、今からでも抗議文を作成してTBSに送ったほうがいい!(そうすると、次の放送でもまた謝罪文が流れるという、以下略。)

他にも、1月9日放送の『チーム有吉』は、笑えなかった人がどんどん離脱して、番組終了時の視聴者は13人ぐらいになったことで助かりましたが、もう少し時間帯の早い頃に放送されていれば、苦情が殺到していたことでしょう。

そういう意味で、上手く記述できず恐縮ですが、今回のような謝罪が出るのは、まだ常識や倫理やルールの範囲内で片付けられる問題だからで、彼のつくる番組はもっと大きな影響を与える可能性もあると思っています。そのとき、謝罪はできるのでしょうか。

知らなくてもいいけど、「藤井の悪意」について

テレビ番組は、基本的に一切の前提情報を必要とせずに視聴することができます。しかし、『水曜日の〜』においては、前述の藤井プロデューサーの「 藤井の悪意 」という単語は頭に入れると楽しくなることは間違いないと思います。

※もちろん、以下のことは「そういう言説を理解して観てないやつが悪い」つまり「シャレが分かってないやつが出てくるとサムいよねー」なんてことを言うためではありません。

この番組のプロデューサーである藤井健太郎は、基本的に全てを「イジり倒し」ます。「ハマダー生存説」の回では、ダウンタウン松本に「このVTRは藤井の悪意を感じますよね」と言われています。

このイジり倒すという「悪意」ですが、とくに顕著なのは 「悪意」の中に「愛情」がほとんど見えてこない ところです。つまり、ただ面白くなるからイジる。面白くなくなるまでイジり倒すところが、彼の真骨頂であり、それが視聴者を爆笑の渦に巻き込んできました。

なので、彼のことを知りながら番組を視聴してる人にとっては、正直「いずれあるだろうな」ぐらいに思ってたのではないか、と推測します。

バラエティの面白いところ/恐ろしいところ

結構とっちらかってしまいましたが、まとめると、「すげー悪いヤツだなぁ」とか「なんてクソみたいな企画なんだ!」という言葉が褒め言葉になるのが、バラエティの面白いところであり、恐ろしいところだと思ってます。

以下の藤井プロデューサーの発言を引用して、また次回3月の放送を待ちたいと思います。とにかく変に終わらないでほしいなあ。

「笑いをベースに、観る人の好奇心にしっかりと応えること。そのバランスはつねに意識してますね。ナレーション等に毒っぽさが混じってしまうのは、僕の癖みたいなものかもしれません。子供の頃からそういう目線が好きだった気がします(笑)。もちろん、特定の誰かを傷つけたり悲しい思いをさせるつもりはなくて、欲しいのはあくまで毒気の先にある笑い。そこは松本さんと浜田さんが完璧に受けてくれるので、思いきった球も投げられます」

__「水曜日のダウンタウン」も絶好調! 視聴者を刺激する藤井健太郎の演出術 |
インターネットTVガイド

※藤井プロデューサー懇親のDJMIXが素晴らしかったので、ついでに。 [soundcloud url=”https://api.soundcloud.com/tracks/88976896”params=“auto_play=false&hide_related=false&show_comments=true&show_user=true&show_reposts=false&visual=true”width=“100%” height=“450” iframe=“true” /]


「いつか書こう」なんて思っているうちに時間がすごい経ってしまいました。というのは、w-inds.の最新シングル『FANTASY』のカップリングである_「Million Dollar Girl」_ についてです。

w-inds.「Million Dollar Girl」は「FANTASY」以上の傑作かもしれない

まあ、とりあえず曲を聴いてみましょう。

ハネ具合のちょうどいいリズムを貴重としつつ、少しチープな音色に感じるホーンセクションが気持ちよく絡み合い、慶太のボーカルがタイトにキメてくるアッパーなパーティーチューン。

簡単にまとめれば「 ノレて、楽しくて、カッコいい! 」という、男性アイドルのポップスとしては最高のパターンではないでしょうか(笑)。

とくに、Aメロの慶太のボーカルは、まさしく「 踊れるボーカル 」と言いますか、歯切れよくスパッと音節(一言ずつ、みたいな意味です)を区切って歌うので、聴いている側も慶太のリズム感が身体に入ってくるような感覚を覚えます。

ちなみに、歌詞は「You’re worth more than million dollar girl」とフックで提示されるように、 ド直球のラブソング 。マイコー好きな自分にとっては、やっぱりこういうストレートなラブレターを歌にしたものは聴くと泣きそうになっちゃいます(下の「Baby Be Mine」など)。 __マイケル・ジャクソン ジャクソン5和訳集 Baby Be Mine - Michael Jackson 和訳

やはり編曲はRyosuke Imai=今井了介

そして「 またお前か! 」となりますが、「Million Dollar Girl」のクレジットを見ると、やはり。アレンジャーは Ryosuke Imai=今井了介さん でした。リズムの組み立て方や音色(とくにラッパの音!)などに注目すると、「Make you mine」と似た感じがあるのがお分かりでしょうか。

※w-inds.初見の方は、ぜひ上のyoutubeだけは1分44秒間観てほしい。世界が少し変わる可能性あります。

今井了介さんの作る曲に毎回ハマってしまうのは、なんといっても 音楽界の流行をしっかり追いつつ、それをJ-POPとしても聴けるように落とし込んでいる ところ。毎回申し訳ないですが、今回も「Suits & Tie」の流れをきちんと汲んでいて、個人的に「Suits &Tie」が好き過ぎるってのもあるんですが(笑)、それを差し引いても、この技術はある種の世界標準だと思います。 ※一方で、「Suits &Tie」は実はもう2年前の作品でして、おそらく次作または次々作あたりで変化があることは当然予想されます。そのとき、今井了介氏はどのような「ネタ」を掘り出して調理するのか。w-inds.ファンとしてでなく、J-POPファンとして非常に興味があります。

「NEW WORLD」で「これからどこ目指そう/オレが連れて行くよ/まだ見たことのない世界を求めて…」なんて言い始めてから、今井了介さんには本当にすごい世界に連れてきてもらっちゃったなー、と思います。

「Sweetest Love」アレンジャーのRob Derbyshireも凄かった

ちなみに、w-inds『FANATSY』のカップリングは他にあと2つありまして、「Frozen in my heart」は申し訳無いながら「EXILEっぽい、よくできたポップス」の域を出ないのですが、 「Sweetest Love」 はなかなかの佳作でした。

こちらは編曲に Rob Derbyshire という方が関わっていて、調べてみると、かなりベテランのプロデューサーでした。 __Rob Derbyshire | High Definition

※以降、w-inds.ファンの方には恐縮ですが(一人ぐらい「オー!」ってなったら面白いですけど・笑)、マーサ・リーブスやエドウィン・スターのキーボーディストとして活動したあと、UKの名門レーベル「Dome」と契約して、フル・フレーバーというバンド(ユニットですかね?)として色々な曲を出しています。

個人的に調べた感じだと、シーシー・ペニストンをフィーチャーした「You are the universe」(ブランニュー・ヘヴィーズのカバー)あたりが良かったです。w-inds.ファンかつ洋楽ファンの方は、チェックしてみてはいかがでしょうか。

__Amazon.co.jp: Finest Flava: Full Flava:デジタルミュージック

カップリングの出来栄えからわかる、w-inds.の体力

と、長々と書いてきましたが、このエントリで言いたいことは「w-inds.のカップリング良かったよ!」ってことで(笑)、あとはオタク的な情報でした。

これは何の論理も無い、ただの信念ですが、「 カップリングはアーティストの体力を示している 」と思っていまして、カップリングが良いアーティストは即ち元気だと判断しています。

そういった意味で、w-inds.は3,4年前あたりからずっとパワフルで、いまだに飽きる兆しがありません。次のシングルも、その先に待っているアルバムも、期待してしまいます。

とりあえずは『FANTASY』を復習しながらその時を待つことにして。


前回の記事や目次などはこちらから。

正しい発音は本当に「正しい」のか?

ラップでもう1点ほど難しい点をあげると、 発音 にあります。これは日本の英語教育が抱えている問題でもありますから、私が書いたところで何の発見も面白みもありませんが、本書でも重要なことですので、書いておきましょう。

たとえば、そもそも私たちは「ヒップホップ」と書いていますが、これがすでに日本語の限界でして、本来「hiphop」は「 ヒップハップ 」と聞こえますし、もっといえば「 ヒッパッ 」と聞こえます。つまり、本書の試みは、この曲の1小節目の「hip」と「hop」ですでに挫折を迎えようとしているわけです(笑)。

百歩譲って、上のような困難だけなら何とかなるかもしれません。しかし、この他にも難しいことが2つあります。ひとつは、

単語と単語どうしをまとめて発音してしまうリエゾン について。そして、もうひとつは 辞書的/一般的な発音をラッパーがしていない ことです。

ちなみに、2つ目については私個人の見方です。英語のおしゃべりには正しい発音があるけれど、ラップにおいては、正しい発音はフロウやライムの名の下に変更があるだろうと、こういうわけです。

というわけで、いくつか困難さを説明したうえで=チャレンジが失敗したときの言い訳をたくさん作ったうえで(笑)、それでは練習にとりかかってみましょう。最初ですから、読者がまごつくぐらいスローに、1音ずつ確認するような気持ちで進めてみます。

16分音符に1音をあてはめて、発音のタイミングを見つける

まず、「 I said a 」を乗り越えましょう。ここだけでも、簡単にできる方もいれば、すでに投げ出す寸前の方もいるはずです。

※歌詞や曲については、前記事の __【ラップとRAP】vol.5 ヒップホップの誕生(1)—SugarHill Gang “Rapper’s Deiight”—を確認してください。 発音から考えます。「I said a」をそれぞれ日本語で表せば、「 アイ セッド ア 」となります。しかし、実際の発音は絶対にこれではないことはわかってもらえると思います。 つまり、「said」の終わりと「a」が重なって、「アイセッダ 」と発音しています。 もうひとつ、このラップの入り方をつかんでみましょう。

ヒップホップでは、スネアやクラップは2拍目、4拍目に入ります( __【ラップとRAP】vol.2 リズムの基本とフロウ・ダイアグラム(1)より)。このラップは4拍目のクラップが鳴ったすぐあとから歌い始めていますね。

すぐ上のエントリで、16分音符というのは、手拍子(4分音符)の半分の半分であることを説明しました。私たちが用いるフロウ・ダイアグラムは、この16分音符を最も小さな単位としています。ですから、

手拍子と手拍子の間の時間を4つに分けて、その4箇所に言葉を入れる ようなイメージをすれば、ラップが捉えやすくなると思います。

これらの点を意識して、ラップの入りのみを日本語で記述すると、 図2 のようになります。 図2 スクリーンショット 2015-02-13 0.58.29

これでも十分わかりやすくなりましたが、さらに理解を優先させるため、最低限の発音だけ残してみましょう。 つまり、

一度に発音する音の、2音目以降を抜いてみる わけです。具体的には 図3 のようになります。 図3 スクリーンショット2015-02-13 0.58.35

「アイセッダ」と「アセダ」では、もちろん発音の仕方は異なります。しかし、少なくとも「発音のタイミング」はかなり掴みやすくなったはずです。この手法は、今後も多用していく予定です。


R-1ぐらんぷり2015』が大盛り上がりの中、あるいは人知れず、幕を閉じました。先日、

__2015年の「R-1ぐらんぷり」は、見なくていいかもしれないなんていうエントリを書いた訳ですが、それでも賞レースらしく、面白いところも見どころも沢山ありました。

優勝は、本田圭佑のモノマネをベースに様々なシチュエーションを演じる じゅんいちダビッドソン 。1回戦は「ややスベり」のような状況ではありましたが、決勝のネタがかなりハマったことで、 ゆりあんレトリィバァマツモトクラブ を抑えて勝つことになりました。 結果だけを見ると、今回のR-1はかなり成功であったような気もします。

じゅんいちダビッドソンという昨年の出場者が念願の優勝を果たした。更に、ほとんどの視聴者にとって「はじめまして」な、ゆりあんレトリィバァ、マツモトクラブが世に出るチャンスを掴んだ。

ほとんどバラエティを見ない視聴者にとっても、自分みたいなバラエティを餌にして生き延びているような(笑)視聴者にとっても、それぞれが納得し楽しめるような内容だったことでしょう。

ただ、どうしても決勝前から感じていた不満/不安は拭えませんでした。お祭りに水を刺すような記事になってしまいますが、いくつか言語化したいと思います。

“制限”の無いR-1

『R-1ぐらんぷり』は、Wikipediaより概要を得ると、

ピン芸人で誰が一番おもしろいかを決める大会であり、同じ吉本主催の若手漫才師のコンクール・「M-1グランプリ」の成功に続く形で開催された。タイトルの「R」は本来落語を意味しているが、落語に限らず「とにかく面白い1人芸」を披露することがルールとなっている(古典落語以外なら基本的に何でもあり)。落語家、モノマネ芸人、漫談家・一人コント師だけでなく、普段はコンビ、グループで活動している芸人、アマチュアでも個人で参加出来る。
元々は若手ピン芸人に漫談の実力を発揮してもらおうという趣旨で行われる方針だったが、若手だけでなく芸歴の長い芸人にも門戸を開いた、原則的にオープンな大会となっている。

__R-1ぐらんぷり -
Wikipedia

とありまして、結局のところ「 1人なら誰でも何やってもいい 」という、ルールと言えるのか怪しい定義のもとで成り立っています。言い換えれば、R-1には制限がありません。 制限が無いということは何を意味するかといえば、 “物語”が発生しづらい ことに尽きるでしょう。野球は「3回空振りしたアウト」になるから、2ストライクが手に汗握るものになるし、初級のホームランにも驚けるものになります。

しかし、R-1にはM-1のような「結成から10年」のような制限がありません。となれば、いつまで経っても予選には出れるし、裏を返せばいつ辞めてもいいという、ある種の「緊張感」のようなものがどうしても欠けてしまうのではないでしょうか。

※そういった意味では、R-1が本当に参照すべきはM-1ではなくTHE MANZAIであるのかもしれません。そう考えると、今の決勝進出者はあながちTHE MAZNAIらしいというか、そうじゃないとノンスタ石田は出ないよねえ…(笑)。

もう一度引用すれば、R-1は_「元々は若手ピン芸人に漫談の実力を発揮してもらおうという趣旨で行われる方針だったが、若手だけでなく芸歴の長い芸人にも門戸を開いた」大会_ でした。この思想はいきなり批判すべきものではないし、それなりに意味のあることですが、それでは視聴者がこのことをインストールしているか?

と考えたとき、答えは「否」でしょう。

「敗者復活」とは結局何なのか?

上記のようなことを書くと、次のことも少し説明できるようになります。それは、今年の「過剰な」敗者復活に対する扱いです。

各グループの始まりごとに、準決勝敗退組と中継をつなぎ、そのグループの敗者復活を1人挙げていく。そのシステムは、“物語”をまったく持つことのないR-1が必死に“物語”をつくり出そうとしているようにも見えました。

しかし、であるならば/そうでなくとしても、あの人選には些かの疑問は残ります。つまり、ここでも上記の「制限の無さ」が効いてくる訳で、なぜCOWCOW善しが選ばれたのか。「準決勝はスケジュールの問題で出れなかったけど(善しは準決勝を棄権しています。もう1人はスギちゃんですが・笑)、やっぱり面白いから選ぶしかない」ということであれば、「じゃあもういいじゃん!」と思う以前に「もしかして、敗者復活って、準決勝に出れなかった芸人が出れるようにするためのシステムなの…?」と訝しんでも仕方のないことでしょう。

つまるところ、「 敗者復活システムって、何をするためなの? 」って話です。M-1の敗者復活が何故あんなに盛り上がったかといえば、それは「敗者復活で出てくるコンビには、一瞬で視聴者が欲望を投げられるような性質があった 」からです。たとえばサンドウィッチマンが出たときの「誰だこの人!?」や、NON STYLE、パンクブーブーが出たときの「やっぱり勝ち上がってきたかー」みたいな感覚です。

COWCOW善しにファンがいないなんて言うつもりはありません。しかし、善しが出ることで「ウォー!」ってなるヤツがどれだけいるんだろうか。

一方でマツモトクラブは、全くの無名というサンドウィッチマン的な出方から、ネタの面白さもマッチして一気に優勝決定戦まで登りました。ヒューマン中村も、R-1をよく見てる視聴者であれば「お、やっぱり這い上がってきた!」と思わせるだけの、“物語”を持った芸人です。

※ちょっと逸れますが、ヒューマン中村が勝ち抜けなかったのは、正直言ってマツモトクラブの勝ちが響いたのだと思います。つまり、3グループから2グループが敗者復活からの勝ち残りだったら、「審査員何してたの?」って話になっちゃいますし(まあそうなんですけど)、いくら面白くてもゲートを開くことはできなかったのだと思います。その流れでじゅんダビが勝った、ってのがカッコいいですよね。

大会自体は結構盛り上がったが、システム面や事前準備に目を向けると、やはり反省点というか、危なっかしい箇所が多かったんじゃないか、というのが結論です。

R-1も「マーケティング」をすべきなのか?

というわけで、笑いながらも色々と文句をつけるという、現代人そのままのような行動を取ってしまいましたが(笑)、自分なりに今後のR-1に注目するなら、下の2点になります。

  • R-1は自身のアイデンティティをいつ見直すのか?

  • R-1はマーケティングを行うのか?

R-1は「オープンな大会」である。しかし、「オープン」は決して良い意味だけではありません。

あなたが軽い気持ちで「野球やろうぜー!」と言って、ちょうどいい面子が集まればいいが、プロ野球選手から野球観戦が趣味なだけの10〜90代の男女が3000人ほど集まったとき、なんの区別もつけずに行う草野球は楽しめるでしょうか。あまり伝わらないですかね(笑)。

つまり、13年の歴史を持っているR-1ですが、あらためて「 R-1とは何なのか? 」を考えなければならない、と思います。言い換えれば「R-1は何を目的とするのか? 」ですね。「陽の目を見てないピン芸人を発掘する」なのか、「テレビでよく見るあの芸人が、本気でピンネタを考えるとこんなに面白いよ」なのか、「たまには落語でも見てみようよ。マジックとかも面白いよ」なのか。

というわけで、「番組のコンセプトが定まってないんじゃないか」というのが10年ほど見てきたコボリの感想です(笑)。とりあえず来年も準決勝に必ず行くことは誓います。


Jay Prince の最新アルバム 『BeFor Our Time』 があまりに素晴らしく、毎日聴いています。最近のヒップホップが持つ、非スクエアなリズム、ローファイ、メロディアスなラップ、遅いBPM、メロウな音使い、パッド音などを詰め込んだ本作は、非常に聴きやすい。オーヴァーグラウンドからアンダーグラウンドまで、どんな人にでも薦められるヒップホップでした。

そして、なぜかフリーで配信してるのが一番ビックリ。 __BeFor Our Time | Jay Prince

Jay Princeとは?

そもそも、Jay Princeとはどのようなアーティストなのでしょうか。上記のbandcampを自分なりに翻訳すると、

Jay Prince is a Hip Hop recording artist and music producer from East
London. His style of music has been described as a chilled and mellow
nostalgic vibe, with influences of 90’s US Hip Hop and todays Hip Hop, Jay
brings a combination of complex poetic lyrics and flow to his music.
ジェイ・プリンスは、イースト・ロンドン出身のヒップホップ系アーティスト、音楽プロデューサーです。彼の音楽は、90年代のUSヒップホップや最新のヒップホップから影響を受けており、詩的な歌詞とフロウによって生み出させる楽曲は「リラックスした(chilled)」、「甘美な(mellow)」、「郷愁的な感情(nostalgic
vibe)」と形容されています。

イースト・ロンドンというのは、単純にロンドンの東側ってことでいいんですかね。下のサイトのような。 __12年間イーストロンドンのリアルを撮影してきた男 |VICE Japan | The Definitive Guide to Enlightening Information

ちなみに、後述の引用で明らかになりますが、ジェイ・プリンスは 1993年生まれの21歳 。いわゆる「注目株」ですね。

『BeFor Out Time』について

SoundCloudに彼のコメントが載っていました。かなり曖昧ですが、翻訳してみると…、

Be For: There are two definitions to this EP, the first being literally
being “for our time”. In the current era of musicians, like myself from
London, people tend crave and look to the states for answers and are quick
to criticise the music from our own home. Some may disagree – but I speak
from experience. This EP is the project that demonstrates there is hope
where we’re from and where I’ve come from and we should unite in that. We
all have a story to tell. This project is about Truth, Love and Passion.
Before: The second meaning of this project is its nostalgic presence. This
being a story telling project, it is filled with reflecting on situations
and life experiences. The whole theme sonically is driven by reminiscence; I
wanted to bring the same feeling or something close to the feeling, you felt
when Hip Hop was at its peak of greatness and what is said actually meant
something. I was born in 1993, and with this project I wanted to give people
that same feeling of when music and Hip Hop was appreciated and respected by
the masses in the 90’s, and bring that feeling back to my home city and the
world. BeFor Our Time, For The People.
このアルバムには2つの意味があって、ひとつは文字通り「僕たちの時代のために」。音楽家のいまの時代は、ロンドンから来た僕のように、人々は答えの代わりに国(states)を切望したり目を向けたりして、地元発の音楽をすぐに批判しようとする。同意しない人もいるだろうが、僕は自分の経験をもとに話そう。このEPは僕たちの地元や僕たちが結成しているグループに希望があることを証明するプロジェクトだ。僕たちはみんな伝えたいことがある。だからこれは、真実について、愛について、情熱についてのプロジェクトだ。
2つ目の意味は、ノスタルジックな存在感だ(訳注:“Before Our
Time”=「僕たちの時代の前」)。これは物語の計画で、当時の状況や人生経験の回顧で満たされている。音質的なテーマは、回顧によって突き動かされた。僕は同じないしはそれに近い感情を生み出すことで、リスナーはヒップホップが素晴らしさのピークを迎えた頃や、本当に何らかの意味をもって言われていたことが何かを感じてほしかった。僕は1993年生まれで、このプロジェクトで僕は人々に90年代に音楽やヒップホップが出現して大衆にリスペクトされていた頃と同じような感情を伝えたかった。自分の故郷や世界に戻ってきたいような感情を届けたかった。

直訳が続いて読みづらいことをお詫びしますが(笑)、個人史における「現代」と「過去」を繋ぐような試みでしょうか。 「Polaroids」 や_「1993」_ あたりは、そういったニュアンスがなんとなく伝わってくるような気もします。 難しいことは省いて音源だけでコメントすると、1曲目_「Yoko」_ の5連符を感じさせるヨレたビートは現代的で素晴らしいですし、3曲目 「Polaroids」 のフックのメロウ具合はシビれます。そして、何より全曲ラップが上手い!韻の踏み方も気持ちよくて真似たくなる。 Polaroids [bandcamp width=100% height=42 album=103284630 size=small bgcol=ffffff linkcol=0687f5]## アングラをもっと掘ろうちなみに、Jay Princeのことを調べていたら、下のサイトに辿り着きまして、今更ながら「アングラやべーなー」みたいになっています。

__Sampling-LoveのBlog - 最近聴いて良かったフリー&NYP作品を7つ SoulEtiquette、Hodgy Beats、Kali Uchisなど

ルーペちゃんのアルバムも結構良かったし(これもレビュー書きたいんですが、なんせ英語記事が多くてどのレビューが面白いのかもわからない!)、2015年のヒップホップは豊作になりそうな予感です。